飲食店における繁忙期である忘年会の時期を終えましたが、新年を迎え、まだまだ新年会、その先には3、4月の歓送迎会と団体客が多い時期が続きます。このような団体客の多くは会社利用であり、お会計のときには手書きの領収書のことも多いでしょう。本記事ではお会計時の収入印紙について取り上げます。※本連載では、飲食店専門の税理士事務所を経営するとともに、自らも調理師として料亭経営に携る田港大輔税理士が、飲食店経営にあたっての税務上の留意点を解説します。

手書きの領収書…消費税込みで5万円以上の場合は注意

●収入印紙はいくらから?

 

お会計時に渡す手書きの領収書において、金額が「5万円未満」であれば収入印紙の貼り付けが不要になることをご存じの方も多いかと思います。しかし、実は領収書の記載の仕方によって同じ代金であっても、収入印紙の貼り付けの要否が異なるのです。

 

消費税に関して、本来は印紙税の対象とならないのですが、記載の仕方によって、収入印紙が必要となってしまうケースがあります。

 

① 消費税額が明らかになる記載

 

「領収金額53,000円、うち消費税額3,926円」

 

上記のような記載であれば、飲食代金自体は49,074円となり5万円未満です。そのため、収入印紙の貼り付けは必要ありません。

 

② 消費税額が明らかでない記載

 

「領収金額53,000円」

 

上記のような領収した金額だけの記載で、消費税の金額について触れられていない場合は領収書全体の金額で印紙の要否を判断されてしまいます。

 

そのため、②の場合には収入印紙を貼りつける必要があるのです。

レシートにも収入印紙の貼り付け義務はある

●手書きの領収書だけではない、レシートにも収入印紙の貼り付けは必要

 

手書きの領収書にはちゃんと収入印紙を貼っている店舗も多いと思いますが、レジスターから打ち出されるレシートにも忘れずに収入印紙を貼っていますか?

 

レシートには貼りつける必要はない、と思っている人は意外と多くいます。

 

しかし、印紙税法の第17号文書「売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書」には、レジスターから打ち出されるレシートも該当します。

 

お客様がレシートに収入印紙が貼られているかを気にすることはあまりないかと思いますが、飲食店側は貼り付けが必要なことを認識しておくべきです。

 

●収入印紙の税務調査

 

飲食店では収入印紙の受け取り相手が個人のお客様であることも多いため、税務調査は反面調査よりも以下のような確認が行われる傾向にあります。

 

① 帳簿の記載内容を確認し、収入印紙の計上を確認する。

(例、10月1日時点で収入印紙の残高は2,000円)

 

② レジスターのデータから収入印紙の貼り付けが必要な5万円以上の取引を抽出し、収入印紙の貼り付け金額を推定。

(10月1日から10月31日までの5万円以上の売上は6件)

 

③ ②で算定した金額と①の収入印紙の残高の計上の整合を確認する。

(2,000円-6件×200円=800円分の収入印紙が店舗には存在するはず)

 

上記のような調査で、想定される収入印紙の残高と実地調査での収入印紙の在高の差が大きい場合には、貼り付けが適切に行われていないのではないかと疑念を抱かれます。

 

●印紙の貼り付け漏れがあった場合の取り扱い

 

ときおり、印紙税の自己点検調査と称して税務署から印紙税の確認を行いなさいという旨の文書が届きます。

 

このときに会社内でしっかり調査を行い、その結果の文書を作成した場合には、収入印紙の貼り付けが漏れていた金額+その10%に相当する金額(つまり、本来の印紙税額の1.1倍の金額)が課税されることになります(印紙税法第20条2項)。

 

一方、会社内での調査を行わず、調査結果の文書の作成を怠った場合には、収入印紙の貼り付けが漏れていた金額+その2倍に相当する金額(つまり、本来の印紙税額の3倍の金額)が課税されることになります(印紙税法第20条1項)。

 

●まとめ

 

収入印紙の貼り付け漏れは税務署の職員が何気なく店舗を利用したときや一般の方による報告によって発覚するケースが多いそうです。

 

貼り付け確認の調査は人手も掛かり利益を生まない作業ですが、飲食店オーナーとしては、店舗内のルールを整備し、余分な税金を払わないで済むよう注意を払う必要があります。

 

 

田港 大輔

税理士

 

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