土地の相続…ズボラな「境界線の管理」で大損する人が多い理由

今回は、不動産の相続トラブルを防ぐための「境界確定測量」の重要性について説明します。※本連載では、相続アドバイザー協議会23期有志の著書、『新訂 家族で話すHAPPY相続』(プラチナ出版)の中から一部を抜粋し、不動産にまつわる相続のトラブルとその解決策を、事例を基に解説していきます。

土地の境界について、確認しておきたい4つの要件

事例1 5000万円になると思って相続した土地が実は・・・

叔父から都内の土地40坪の相続を受けた甥のAが、その土地を売るために確定測量を土地家屋調査士に依頼しました。ところが、調査の段階で、その土地と道路との間に、もう何年も絶縁状態の親せきの土地があることが判明。なんとその土地は未接道の土地だったのです。Aは相続を受けた当初は遺産を残してくれた叔父さんに感謝の気持ちでいっぱいでしたが、この事実がわかり、「こんなことなら相続しないほうがよっぽど良かったよ」と、今では叔父さんのことを恨む気持ちに変わってしまいました。叔父さんもこんなことならきっと甥にこのような財産を残さなかったでしょう。

 

事例2 相続人同士の土地の分割協議はもめる!?

父は生前にアパートと自宅の建つ600m2の土地を兄弟2人で半分ずつ相続するように遺言を残していました。相続発生後、兄が自宅と東側300m2の土地を、弟がアパートと西側300m2の土地を相続することになり、確定測量を行いました。確定測量後、いざ分割線を引こうとしたとき、予定していた分割線より兄の相続する自宅の水道管が1メートルもアパートのある西側の土地に入り込んでしまうことが判明。兄弟のお互いの主張がまとまらず、このことがきっかけで、それまで仲が良かった兄弟が口も利かない仲になってしまいました。亡くなる前にお父さんが相続させる土地を分けていればこのようなことにはならなかったかもしれません。

 

相続対策をするうえで、まず初めに行うことは、財産を特定することです。

 

特に、土地は、財産の中でも高額な資産評価がされ、資産全体からみても占める割合は大きいものです。

 

多くの方は、「登記をしているからだいじょうぶ」、「家を建てるときに測量してあるから問題ない」と安易に考え、登記簿の面積(地積という)で、このくらいの資産価値があるのではないかと推測したり、登記簿の面積を信じて分割を考えたりしてしまいがちです。しかし、土地という財産は、非常に分けづらい、換価しにくい、また価値がわかりにくい不透明な特徴がありますので、できれば遺言書を書く前にきちんと土地の状況を把握し、現況にあった正確な内容で遺言を残したほうがより安全です。そのためには、日ごろから土地の境界を正しく管理しておくことが重要になります。

 

土地の境界標を隣接の方とお互い確認し、境界線をはっきりさせるための測量を境界確定測量といいます。この境界確定測量を、土地の所有者本人が行うことは、相続に備えるうえでも、より安全な形で財産を残すことができるほか、次世代に苦労を残さない対策にもつながります。見落としがちな問題ですが、非常に重要なことですので、ご自身の土地と向き合ってよく考えていただき、円満相続につながる一歩に役立てていただければと願っております。

 

土地の境界を日ごろから正しく管理しておくと、いざというときにトラブルなくスムーズに売却することができ、また自由に土地を分けることができます。ご自身の土地が正しく管理されているか? 次の4つの要件がすべて整っているかご確認ください。

 

1 境界標が明確になっている

2 隣接所有者と境界の立会いをおこない「境界確認書」の取交しが済んでいる

3 土地の現況と登記記録の内容が一致している

4 法務局にその土地の復元可能な地積測量図が備え付けられている

 

このような要件が満たされていない土地は、隣接所有者との境界をはっきりさせるための境界確定測量を行い、安全な状態で管理しておくことがより安心です。境界確定は隣接所有者のご協力がなければ成立しませんので、自分の意思だけでは、進めることができない問題が多く含まれております。

 

特に土地を処分して相続税を10ヶ月以内に納付しなければならない場合は、隣接所有者のご協力が思うように得られないがために、確定するまでにかなりの期間を要してしまい、期間内に間に合わないケースが多々あります。時間に余裕があるときにきちんとお隣さんとの境界を決めておくことが、次世代に苦労を残さない準備になります。

 

まずは、ご自身の土地の境界がどこなのか? 隣接所有者は誰なのか? を確認するところから始めてください。

 

[図表1]

 

境界確定のとき、ご協力いただく可能性のある隣設地は、1点の境界で接している隣接も含まれます。また、道路の境界を役所と立ち会うときは、道路向かいの所有者のご協力も必要になる場合があります。

「筆界」と「所有権界」の違いとは?

①相続人側の問題

相続人が複数の場合は、それぞれの思いや状況によって考え方もいろいろです。足並みをそろえることが非常に大変になります。

 

境界確定測量をする作業のなかでは、何度も所有者(相続人全員)からのサインが必要な場面があります。役所へ提出する「道路境界確定関係書類」や「境界確認書」、地積更正や分筆登記の際の「委任状」等々、その都度、作業の進行に応じて一つの書類を持ち回り署名していただかなければなりません。

 

相続人同士の仲が悪いので、代理人を介して書類にサインをしなければならない場合や、たとえ仲が良くても、相続人の中には、仕事が忙しい人や、海外出張が多い人がいる場合もあります。それぞれの生活のなかで一つの提出書類に連名でサインすることは、かなりの時間と手間がかかってしまいます。被相続人が生きている間であれば、所有者一人のサインで済んだことでも、相続発生後は、書類一つとっても足並みをそろえるのに苦労します。

 

<ここがポイント>

境界確定測量は、生前に行っていれば、所有者一人の意思で進めることができる

 

②お隣さん側の問題・その土地特有の問題

境界を確定するには、原則その土地に係わる隣接地の所有者全員と境界立会いを行い、境界について双方が同じ認識にあることを確認できなければ成立しません。相続発生後、土地の境界の事や、日ごろからご近所付き合いをしていない相続人にとっては、所有者本人が、生きている間に行うより大変な作業になりかねませんので、今のうちから、ご家族で土地の境界のことやご近所さんのことについてのお話合いをしておくことも重要です。

 

あなたの土地と隣接する土地にこんな問題が潜んでいるかもしれません。

 

●隣地の所有者との間で境界線の認識が違っている

●隣接所有者と連絡が取れない

●隣接地がマンションや私道で共有者が多数おり全員と境界確認をすることが大変である

●確定を急いでいることに付け込まれ隣接所有者から隣接地に有利な境界線を主張された

●前面道路が私道で登記簿上の所有者が、明治時代の人の名義のままになっており、相続人を見つけることが困難だ

●越境問題でもめてしまい、境界確認書の取交しを拒否された

●宅地と道路との接道が2m未満であり再建築できない土地ということが確定後に発覚した

●境界確定が間に合わず売却のタイミングを逃してしまった

 

[図表2]こんな隣地は時間がかかる!?

 

一般的に境界とひと言で言っても大きく分けて「筆界」と「所有権界」の二つの意味を持ちます。

 

[図表3]土地の境界について

土地の境界確定は「土地家屋調査士」に相談

生前に行う境界確定作業には次のようなメリットがあります。

 

[図表4]相続前に確定測量するメリット

 

皆さんが土地の測量をすることは一生のうちにそう何回もあることではありませんので、たいていの方はどこに相談して良いのかわからないと思います。土地の財産境を決める境界確定は、土地家屋調査士にご相談ください。

 

土地家屋調査士は、わが国で唯一の土地の境界に関する専門家です。不動産の物理的状況を正確に登記記録に反映させるために、必要な調査および測量を行っています。

 

土地家屋調査士が行う確定測量は、登記記録に反映されている公法上の境界(筆界)を隣接所有者と確認し、それに基づき測量を行いますので、登記記録と確定面積が違った場合の地積更正登記や、土地を分けたいときの分筆登記の手続も行うことができます。

 

このように境界をはっきりさせるということは、相続対策をするうえで、物理的な対策はもちろんのこと、人間関係上の対策にもつながる重要なことの一つです。円満かつスムーズな相続を願う皆さんにとって、「何をしておけば残された人たちが困らないだろうか?」ということに向き合う気持ちが大切ではないでしょうか?

 

「何も問題が起きていないうちに専門家に相談するのは気が引ける」というお考えをお持ちの方が多いと思いますが、少しでも不安なことがあれば早めに専門家へ相談することが一番です。なんでもお気軽にご相談ください。

(相続アドバイザー協議会とは?)
相続に関する諸問題に対して円満な相続を実現するため、総合的なアドバイスができる人材を養成することを目的に、不動産鑑定士、税理士、不動産業、建設業が中心となり2000(平成12)年に設立したNPO法人です。

的確なアドバイスで相談者の利益を守る「相続アドバイザー」を養成するため、税務、不動産、建物、保険など各分野の相続実務に関わる専門家を講師として、全20講座・41時間の「相続アドバイザー養成講座」を定期的に開催しています。

2005(平成17)年には、法令の改正や社会の変化に対応した知識を習得し、実務能力を向上させ、さらに研鑽を続けるため「上級アドバイザー資格制度」を創設しました。
同協議会では「相続アドバイザー」として、以下の5点を定義しています。

(1)本業を補完する基本的知識の習得
(2)本業をより発展させるためのビジネス的感覚の習得
(3)お客様の利益を第一義に考えるコンサルタントとしての役割
(4)信頼性のある人的ネットワークの構築
(5)持続的・継続的な研修の実施による能力の充実を図る。

※写真は相続アドバイザー協議会の常務理事で、同養成講座23期生でリーダーを務めた都築恒久氏

 (23期有志)阿部龍治、新井明子、井上嵩久、岩見文吾、木村太郎、児山秀幸、至田裕子、
       鈴木一哉、関京子、高橋欣也、高林節子、千代延和義、都築恒久、徳元康浩、
       貫井政文、服部毅、古越俊介、松村茉里 ※50音順敬称略

著者紹介

連載「争族」の事例に学ぶ~「不動産の相続」でモメないための対策講座

 

新訂 家族で話すHAPPY相続

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相続アドバイザー協議会

プラチナ出版

私たちはふだん気づきませんが、相続には落とし穴がたくさんあるのです。こうした落とし穴について、さまざまな専門家から解説し、皆さんにHAPPYな相続をしていただきたい、そう考えて私たちは皆で協力して本書を世に出すこと…

 

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