地域の社会課題の解決を目指す「コミュニティ財団」
NPOが活動するために必要な財源のなかで、重要なものの一つが「寄付」であり、特に富裕層には「高額寄付」が期待されています。
高額寄付の定義も一括りにはすることは難しいですが、ここでは100万円以上の寄付についてイメージしてみましょう。
これぐらいの金額になると「自分の関心ある(=課題感を持っている)領域」に、「自分が思い描く形」で、「信頼できる団体に活用してほしい」、さらに「丁寧な報告がほしい」と思うのではないでしょうか。言い換えると、寄付したお金がどんな風に役だったか実感できないのは困るのです。
このような高額寄付を検討していると相談されることは時々ありますが、そんなときに筆者は、まずは以下のような問いかけます。
「あなたが解決したいと願っている社会課題はなんですか?」
「あなたがすでに関心を持っているNPOはありますか?その理由は?」
「寄付先のNPOに求めたいことはなんですか?」
こんな問いかけを起点に、寄付者の想いに似合う寄付先をいくつか選定・提案し、場合によっては事前に対話の機会を設けて寄付を実行し、その寄付がどう役立ったのかをモニタリングしていく。フィランロソピー・アドバイザーはそんな役割を担います。自分の意志を寄付金にしっかり乗せて行きたい、
このようなオーダーメイド型のコーディネートよりは、もう少し気楽に既存の仕組みを活用する方法として、「コミュニティ財団」があります。コミュニティ財団は全国各地にあって、筆者が理事を務めている静岡県の公益法人ふじのくに未来財団もその一つです。
寄付をしたい特定のNPOはないけれど、関心あるテーマやエリアだけが定まっている場合には、多くのコミュニティ財団が持っている仕組み「テーマ指定寄付(※名称は団体によって異なります)」を利用するといいでしょう。寄付をすると、一定期間に集まった寄付金を原資に助成金となり、所定のプロセスを経て優れた活動をするNPO等に届けられます。
公募・審査・モニタリングという業務は専門家に任せられるので、関心ある社会課題は明確にあるものの、細かいことは任せたいという方にお勧めの方法です。金額の単位がもう少し大きくなると、この助成金に自分の希望する名前を冠した「冠基金」を設定することも可能です。全国のコミュニティ財団に関する情報は、一般財団法人全国コミュニティ財団協会が中立的に発信しています。
最後の社会貢献としての遺贈寄付
入門編の第14回と第15回のコラムでも書きましたが、自分の遺産を未来へつなぐ「遺贈」という方法も、人生の集大成の社会貢献活動として関心が高まっています。
遺贈には、相続した財産を相続人が自分の意志で寄付をする「相続財産寄付」の他に、遺言書などにより故人(被相続人)の意志で寄付が行われる「遺贈寄付」というものもあります。
遺贈寄付は、生前に遺言書などを残すことで寄付する意志を表明し、それを遺言執行者が実行することで行われます。ご自身が生前から力を入れていた社会貢献活動への支援を、相続によって途切れてしまわないよう、遺言書によって社会貢献の意志を未来につなげます。一定の財産を成した方々には、ぜひ知っていただきたい寄付の方法です。
2016年11月に発足した、寄贈寄付の推進団体「全国レガシーギフト協会」は全国的なネットワーク組織で、無料で遺贈に関する相談ができる中立的な窓口を、全国16ヶ所(2017年2月現在)に展開しています。各地の相談窓口に行くと、弁護士や司法書士などの専門家の紹介、寄付先団体選びの相談、遺言書作成のサポートなどを行ってくれますので、関心のある方は、こちらに問合せをしてみてもよいかもしれません。
毎年12月は寄付の啓蒙キャンペーン「寄付月間」
最後に紹介したいのは「寄付月間(Giving December)」という運動です。寄付月間は、NPO、大学、企業、行政などで寄付に係る主な関係者が幅広く集って始まった全国的なキャンペーンです。12月1日から31日を寄付月間と呼び、全国各地で様々な企画が実施されています。
初年度の2015年に筆者も事務局メンバーを務めましたが、小泉進次郎議員の呼びかけなどから共感の輪が広がり、ビル・ゲイツ氏やサッカー日本代表の香川真司選手、古田敦也さんなどもイベントや広報に協力し、23もの公式認定企画が全国各地で実施されました。
2年目の2016年には、人気アーティストの「SEKAI NO OWARI」の協力が加わり、公式認定企画は初年度の約3倍となる71に、3年目の2017年には企業・自治体等のマスコットキャラクターが寄付月間をPRする「マスコットアンバサダー制度」が始まり、小中学生や高校生による企画など127の公式認定企画が全国各地で実施されました。今年2018年で4年目を迎え、全47都道府県から502の法人が寄付月間に賛同し、全国的な寄付啓発キャンペーンとして広がっています。
この寄付月間は、特定の団体への寄付をお願いするものではなく、一人ひとりがこの機会に寄付について考え、実際に寄付したり、寄付月間についてソーシャルメディアで広げたり、寄付の使い道の報告が推進されるきっかけになれば、という思いで開催されています。
寄付月間のキャッチフレーズは「欲しい未来に、寄付を贈ろう。」です。このタイミングでこのコラムを読んだ皆様には、ぜひご自身なりの方法でこのキャンペーンとの関わり方を考えていただけるとありがたいです。