2018年11月のマーケットの振り返り③

マンスリーマーケットレポート

三井住友アセットマネジメント株式会社 調査部
2018年11月のマーケットの振り返り③

三井住友アセットマネジメント株式会社が、2018年11月のマーケットについて振り返り、「1. 概観、2. トピックス、3. 景気動向、4.企業業績と株式、5. 金融政策、6. 債券、7. 為替、8. リート、9. まとめ」のそれぞれについて解説します。今回は、「6. 債券、7. 為替、8. リート、9. まとめ」を見ていきましょう。※本連載は、三井住友アセットマネジメント株式会社が提供するマーケットレポートを転載したものです。

6.債券

<現状>

 

米10年国債利回りは、9月中旬に3%台に乗せ、11月8日には3.24%まで上昇しましたが、その後は低下基調を辿りました。11月上旬は10月の雇用統計で雇用者数が上振れたことや、FOMCにおいて利上げ継続の方針が確認されたこと等から、利回りは上昇しました。ところが、中旬以降は米景気指標の軟化、米株価や原油価格の下落、パウエル議長をはじめとするFRB高官のハト派的な発言を受けた利上げ観測の後退等により低下し、11月末の10年国債利回りは前月末より低い水準で引けました。欧州では、英国のEU離脱交渉を巡る不透明感が強まったこと、11月のドイツPMIが製造業、非製造業とも市場予想を下回ったこと等を受けて、ドイツ10年国債利回りは低下しました。日本の10年国債利回りも、米長期金利の低下や欧米株式市場の下落等により、低下しました。米国の社債については、国債との利回り格差が前月末に比べ拡大しました。

 

<見通し>

 

米国では、10月以降ドル高や株式市場の変動など金融環境が引き締まってきており、FRBがタカ派色を強めるリスクは後退しました。長期金利は当面レンジ内で推移する見通しです。欧州では、緩やかながらも景気拡大が続くなか、ECBによる緩和縮小の推進が想定され、長期金利も緩やかに水準を切り上げると予想されます。一方で、英国のEU離脱問題やイタリアの政局不安のため、リスク回避傾向は残存すると見られます。よって、金利の上昇は限定的と考えられます。日本では、物価上昇が緩慢なものにとどまるため、日銀の緩和的な金融政策は長期化し、長期金利は低位での安定した推移となる見込みです。

 

主要国の10年国債利回りの推移

(注)データは2016年11月1日~2018年11月31日。 (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成
(注)データは2016年11月1日~2018年11月30日。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成

 

先進国国債の利回り、社債スプレッドの推移

(注1)データは2016年11月~2018年11月の月次データ。 (注2)社債利回りと社債スプレッドは ブルームバーグ・バークレイズ・グローバル社債インデックス。先進国国債利回りはFTSE世界国債インデックス。 (出所)Bloomberg L.P.、FTSE Fixed Income LLCのデータを基に三井住友アセットマネジメント作
(注1)データは2016年11月~2018年11月の月次データ。
(注2)社債利回りと社債スプレッドは ブルームバーグ・バークレイズ・グローバル社債インデックス。先進国国債利回りはFTSE世界国債インデックス。
(出所)Bloomberg L.P.、FTSE Fixed Income LLCのデータを基に三井住友アセットマネジメント作

7.為替

<現状>

 

11月は円が米ドル、ユーロ、豪ドルといった主要通貨に対して下落しました。11月に開催されたFOMCにおいて利上げ継続の方針が確認されたことや、主要国の株価が反発に転じたこと等を受けリスク回避の円買いの動きが後退したことによるものです。

 

<見通し>

 

円の対米ドルレートは、米景気の強さや日米実質金利差(米ドル高円安要因)と、日本の経常黒字、米国の双子の赤字(米ドル安円高要因)の綱引きとなり、110円を中心とするレンジでの推移となる見通しです。ユーロは、製造業の緩慢な景況回復や、イタリアの政治リスク等により短期的には頭を抑えられる可能性がありますが、ユーロの経常黒字が高水準にあるうえ、景気も崩れているわけではありません。市場がECBの金融緩和縮小を意識し始めるにつれ、ユーロは緩やかな反発に向かうと予想されます。一方、豪ドルの対円相場は、豪州景気が堅調さを増すと見られることや、先行きは豪日間の金利差が広がると予想されること等を踏まえると、底堅い推移が見込まれます。

 

各通貨の対円レート

(注)データは2016年11月1日~2018年11月30日。 (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成
(注)データは2016年11月1日~2018年11月30日。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成

8.リート

<現状>

 

11月のグローバルリート市場は、主要国の長期金利低下を受けて上昇しました。円ベースの月間上昇率は、為替効果がプラスに寄与したため、ドルベースの上昇率を上回りました。

 

<見通し>

 

FRBによる利上げは、緩やかなペースで実施されると見られ、長期金利は当面、レンジ内での動きになると予想されます。相対的に高い利回りを求める投資家からの需要は根強く、これが引き続きグローバルリート市場を支援すると考えられます。世界的な景気拡大と低金利環境の下で、グローバルリート市場は底堅い展開が予想されます。

 

代表的グローバルリート指数の推移

(注1)日本円ベースは2005年1月1日の米ドルベースを基準に指数化。 (注2)データは2016年11月1日~2018年11月30日。 (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成
(注1)日本円ベースは2005年1月1日の米ドルベースを基準に指数化。
(注2)データは2016年11月1日~2018年11月30日。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成

9.まとめ

<株式>

 

S&P500指数採用企業のEPSは18年が前年比+24.0%、続く19年は同+8.4%が予想されています(予想はリフィニティブI/B/E/S)。一方、日本の予想経常利益増益率は、18年度(19年3月期決算)が前年度比+8.3%、19年度(20年3月期決算)は同+7.8%の見込みです(東証1部除く金融、QUICKコンセンサスベース、18年11月27日現在)。日米株式市場は、大幅な株価調整によって利益との関係から割安感も台頭しています。

 

<債券>

 

米国では、利上げやFRBの資産圧縮など金融政策を正常化する動きが継続する見通しです。もっとも、物価が落ち着いていること等から、FRBによる利上げは緩やかなものになると見られ、長期金利は当面レンジ内での推移が予想されます。欧州では、ECBが18年末に量的緩和政策を終了し、19年秋以降に利上げを実施する見込みです。インフレが緩やかに持ち直していくとともに、長期金利も徐々に水準を切り上げていくと予想されます。日本では、日銀の緩和的な金融政策が長期化する見通しです。債券需給の逼迫もあり、長期金利は低位での安定した推移が予想されます。米国など主要国の社債市場は、企業の堅調な業績などを背景に、社債スプレッドは安定的に推移する見通しです。

 

<為替>

 

米景気の強さや日米実質金利差(米ドル高円安要因)と、日本の経常黒字、米国の双子の赤字(米ドル安円高要因)の綱引きとなり、円の対米ドルレートはレンジ内での動きが見込まれます。対ユーロでは、堅調な域内経済やECBの金融緩和縮小の方針がユーロの支援材料になると予想されます。一方、豪ドルの対円相場は、豪州景気の堅調さが増すと見られること、先行きは豪日間の金利差が広がると予想されること等を踏まえると、今後、底堅い推移が見込まれます。

 

<リート>

 

FRBによる利上げは緩やかなペースで進められる見通しであり、長期金利は当面、レンジ内での動きになると予想されます。こうしたなか相対的に高い利回りを求める投資家からの需要が根強いことが、引き続きグローバルリート市場をサポートすると見られます。世界的な景気拡大と低金利環境の下で、グローバルリート市場は底堅い展開が予想されます。

 

(2018年12月5日)

●当資料は、情報提供を目的として、三井住友アセットマネジメントが作成したものです。特定の投資信託、生命保険、株式、債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、三井住友アセットマネジメント、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料は三井住友アセットマネジメントが信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料に掲載されている写真がある場合、写真はイメージであり、本文とは関係ない場合があります。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧