今回は、口座について見ていきます。※本連載は、相続業界の最大手・相続手続支援センター編の『家族が困らないために 亡くなる前にやっておきたい手続きと対策』(ビジネス教育出版)より一部を抜粋し、来るべき相続に備え生前にやっておきたい手続きと対策を事例形式でわかりやすく解説します。

利用しなくなった銀行口座は早めに解約しておくこと

【問題事例5】通帳が見つからずキャッシュカードだけの休眠口座

 

亡くなった父の残したものを確認していたら、古いキャッシュカードが出てきました。10年以上も前のカードのようです。父からは何も聞かされておらず、通帳も見つかりませんでした。キャッシュカードの銀行に確認をしたところ、父名義の預金が出てきました。

 

【問題点】

 

①最後の取引から10年経つと休眠口座として取り扱われます。

 

②キャッシュカードや通帳などの手掛かりがないと見つからない可能性があります。

 

注意すべきポイント

 

休眠口座は基本的には、預金者の権利が失われるわけではないので、窓口に行くと払戻しを受けることができます。

 

毎年生まれている休眠口座の預金は700億円を超えるといわれています。これらの休眠口座の預金を預金保険機構に移管し使途を限定して活用することとされています。しかし、今後の動向には不明な点もありますので、早期に解約手続をすることを勧めます。

 

【問題事例6】残額が少額のまま放置されている多数の銀行口座

 

Aさんが亡くなり、残された銀行口座を調べていたら、残額が少額のものがいくつも出てきました。生前には利用していたようですが、最近は利用することがなく、少額のまま放置されていました。少額とはいえ各銀行での手続きが必要となり、手続きに必要な戸籍を集めて、各銀行で手続きを行いました。

 

【問題点】

 

①少額口座といえども相続財産で解約するのに手間がかかる場合があります。

 

②どこの銀行かがわからなければ、手続きもできないという状況になってしまう可能性があります。

 

注意すべきポイント

 

少額預金は手続きをしないでそのまま置いておく人もいます。相続人が3人の場合、解約するのに3人分の印鑑証明書が必要な場合もあり、手続きをすると費用のほうが多くなってしまう場合もあります。

 

また、金融機関の支店の統廃合により、支店名が変わっている場合も多くあります。以前勤めていた会社の給与振込口座、銀行との付合いで作った口座、昔住んでいた家の近くの銀行などの通帳がないか、確認する必要があります。

遺産分割対象として協議されるべきかという判断が必要

【問題事例7】子供本人に知らせていない子供名義の口座

 

Aさんが亡くなった後、財産の調査をしたところ、子供名義の預貯金通帳が出てきました。子供たちはその通帳の存在を知らなかったのですが、Aさんの名義でないということで、相続財産には入れずに、それぞれの子供たちの預金として手続きを行いました。

 

後日、税務当局から指摘があり、相続財産とみなされ、相続税の対象となり、追徴税額を支払うこととなりました。

 

【問題点】

 

①家族名義であったとしてもその預金口座が実質的に被相続人に帰属していたと考えられる場合、相続財産となります。

 

②Aさんしか知らなかった場合、亡くなった後に発見されず、そのまま相続されずに残る可能性があります。

 

注意すべきポイント

 

本人には内緒で子供名義で預金口座をつくっていたというケースは少なくありません。子供名義の口座が見つかった場合には、その名義人の認識や預貯金の管理状況などを総合的に考慮して、遺産分割の対象として協議する必要があるかどうかの判断が必要になります。

 

相続税がかかる場合は遺産分割の対象としない、と相続人間で取り決めたとしても、相続税の対象となることがあります。

単元未満株や端株は発行元に買い取ってもらう

【問題事例8】長年取引をしていない証券口座

 

問題事例Aさんが亡くなった後、財産の調査をしたところ、以前に取引を行っていた証券会社の口座が見つかりました。口座には、株式や債券の保有はなく、わずかな金額がMRF(マネー・リザーブ・ファンド)に残っていました。相続人で話し合い、証券会社での手続きを行いました。

 

【問題点】

 

①取引を行わなくなった証券会社の口座であっても、預金と同様、口座は残っています。

 

②株式や債券が証券会社の口座になくても、MRFなどの形で残っている場合があります。

 

注意すべきポイント

 

取引をしなくなった証券会社の口座も、少額預金と同様、口座は残り続けます。住所変更の届出などをしていない場合は、郵送物などのお知らせも届かないので、見つけることが難しくなります。さらに、インターネットの証券会社の場合だと、郵送物もないので、より難しくなります。

 

そのままになっている証券会社の口座がないか、確認をしておく必要があります。口座があって今後利用しない場合は、解約手続きをすることをお勧めします。

 

【問題事例9】単元未満株や端株は売買できない?!

 

問題事例Aさんが亡くなった後、財産調査をしたところ、証券会社でX会社の株式を600株保有していました。配当のお知らせも来ていたので、内容を確認したところ、保有株604株となっており証券会社での保有数と違います。調べたところ、単元株に満たない株式であることがわかり、手続きを行いました。

 

【問題点】

 

①企業合併や株式分割などによって、単元株に満たない株式を保有するケースがあります。売買は単元株が基本単位となりますが、端株についても手続きを行う必要があります。

 

②上場株式が電子化されましたので、手元に株券はありません。証券会社との取引がなくても、従前株取引をされていた方は端株や単位未満株が存在する場合があります。

 

注意すべきポイント

 

単元未満株や端株の所在は、信託銀行からの郵便物で確認したり、預金通帳で配当振込を確認することができます。

 

単元未満株や端株は、普通に売買することができません。その株の発行会社に買い取ってもらう買取り請求や、単元未満株の不足分を追加発行してもらう買増し請求という方法があります。ただし、証券会社によっては買増し請求を受け付けていないところもありますので、確認が必要です。

 

手続きが長期化する場合もある株の二次相続

【問題事例10】信託銀行預かりになっていた端株を相続すると・・・

 

亡くなったAさんが遺した財産の中に、Z社の株式がありました。その株式はAさんの父から相続したものです。Aさんは株式に興味がなかったため、Aさんの父の証券会社の口座を相続し、取引することなくAさんが亡くなりました。

 

Aさんが亡くなった後、Aさんの父の名義のZ社の端株が見つかりました。Z社はAさんの父が亡くなる前に、株式の割当てを行っており、割当て分が端株になるため、証券会社での預かりになるものではなく、信託銀行預かりになっていました。

 

【問題点】

 

①証券会社の保管株は取引単位のものであり、端株は証券会社の保管株にはなりません。

 

②株式の割当てについて、株取引に興味がないとわかりにくい場合があります。

 

注意すべきポイント

 

株式の取引があった場合、証券会社で引き継いだ株式数と株主総会の案内などで表示される株式数の確認をする必要があります。また、二次相続であった場合、先の相続のときに手続きがされていない場合もあるので、信託銀行や証券会社からの郵送物について確認をする必要があります。株主総会などのお知らせは1年に1回しか来ない場合もあり、手続きが長期化する場合もあります。

家族が困らないために 亡くなる前にやっておきたい手続きと対策

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相続手続支援センター

ビジネス教育出版社

来るべき相続に備えて子供や孫、家族のために今できること、行き過ぎた節税策でなく事情を知っているあなただからこそ整理しておくべき事項を網羅し、事例形式でわかりやすく解説。

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