2018年10月のマーケットの振り返り③

マンスリーマーケットレポート

三井住友アセットマネジメント株式会社 調査部
2018年10月のマーケットの振り返り③

三井住友アセットマネジメント株式会社が、2018年10月のマーケットについて振り返り、「1. 概観、2. トピックス、3. 景気動向、4.企業業績と株式、5. 金融政策、6. 債券、7. 為替、8. リート、9. まとめ」のそれぞれについて解説します。今回は、「6. 債券、7. 為替、8. リート、9. まとめ」を見ていきましょう。※本連載は、三井住友アセットマネジメント株式会社が提供するマーケットレポートを転載したものです。

6.債券

<現状>

 

米10年国債利回りは、9月中旬に3%台に乗せ、10月5日には3.23%まで上昇しました。良好な米景気指標の発表やFRB高官のタカ派的なコメントを受け、利上げが加速するとの観測が強まったためです。その後は米中貿易摩擦の激化、サウジアラビアを巡る地政学リスクの高まり、業績懸念による米株式市場の急落等から「質への逃避」の動きが強まり、3.10%前後で推移しました。欧州では、世界的な株安に加え、10月のユーロ圏PMIやドイツifo景況感指数の低下により域内景気減速の懸念が浮上したため、ドイツ10年国債利回りは低下しました。日本の10年国債利回りは、米長期金利の上昇とともに9日には0.16%台まで上昇しましたが、その後は株価の急落等から低下しました。月末は前月末比ほぼ横ばいの0.13%でした。

 

<見通し>

 

米国では、インフレの安定が続く見通しのなか、金融政策の正常化が継続することで、長期金利はレンジを小幅に切り上げると予想されます。

 

欧州では、緩やかながらも景気拡大が続くなか、ECBによる緩和縮小の推進が想定され、長期金利も緩やかに水準を切り上げる見通しです。

 

日本では、物価上昇が緩慢なものにとどまるため、日銀の緩和的な金融政策は長期化し、長期金利は低位での安定した推移となる見込みです。

 

米国など主要国の社債市場は、企業の堅調な業績などを背景に、国債利回りとのスプレッドが安定的に推移する見通しです。

 

主要国の10年国債利回りの推移

(注)データは2016年10月1日~2018年10月31日。 (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成
(注)データは2016年10月1日~2018年10月31日。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成

 

先進国国債の利回り、社債スプレッドの推移

(注1)データは2016年10月~2018年10月の月次データ。 (注2)社債利回りと社債スプレッドは ブルームバーグ・バークレイズ・グローバル社債インデックス。 先進国国債利回りはFTSE世界国債インデックス。 (出所)Bloomberg L.P.、FTSE Fixed Income LLCのデータを基に三井住友アセットマネジメント作
(注1)データは2016年10月~2018年10月の月次データ。
(注2)社債利回りと社債スプレッドは ブルームバーグ・バークレイズ・グローバル社債インデックス。先進国国債利回りはFTSE世界国債インデックス。
(出所)Bloomberg L.P.、FTSE Fixed Income LLCのデータを基に三井住友アセットマネジメント作

7.為替

<現状>

 

10月は、円が米ドル、ユーロ、豪ドルといった主要通貨に対して上昇しました。米中貿易摩擦の激化や、イタリアの財政問題、英国のEU離脱を巡る交渉の難航、米国の中間選挙に対する警戒感等から、リスク回避の円買いの動きが強まったことによるものです。

 

<見通し>

 

円の対米ドルレートは、米景気の強さや日米実質金利差(米ドル高円安要因)と、日本の経常黒字、米国の双子の赤字(米ドル安円高要因)の綱引きとなり、レンジでの推移となる見通しです。ユーロは、製造業の緩慢な景況回復や、イタリアの政治リスク等により短期的には頭を抑えられる可能性がありますが、ユーロの経常黒字が高水準にあるうえ、景気も崩れているわけではありません。市場がECBの金融緩和縮小を意識し始めるにつれ、ユーロは緩やかな反発に向かうと予想されます。一方、豪ドルの対円相場は、豪州景気の堅調さが増すと見られることや、先行きは豪日間の金利差が広がると予想されること等を踏まえると、底堅い推移が見込まれます。

 

各通貨の対円レート

(注)データは2016年10月1日~2018年10月31日。 (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成
(注)データは2016年10月1日~2018年10月31日。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成

8.リート

<現状>

 

10月のグローバルリート市場は、世界的な株安を受けて、下落しました。円ベースの月間下落率は、為替効果がマイナスに寄与したため、ドルベースの下落率よりも大きくなりました。

 

<見通し>

 

利上げの継続、FRBの資産圧縮などから、米長期金利には上昇圧力がかかりますが、物価が落ち着いているためレンジを多少切り上げるにとどまる見通しです。相対的に高い利回りを求める投資家からの需要は根強く、これが引き続きグローバルリート市場を支援すると考えられます。世界的な景気拡大と低金利環境の下で、グローバルリート市場は底堅い展開が予想されます。

 

代表的グローバルリート指数の推移

(注1)日本円ベースは2005年1月1日の米ドルベースを基準に指数化。 (注2)データは2016年10月1日~2018年10月31日。 (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成
(注1)日本円ベースは2005年1月1日の米ドルベースを基準に指数化。
(注2)データは2016年10月1日~2018年10月31日。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成

9.まとめ

<株式>

 

S&P500指数採用企業のEPSは18年が前年比+23.8%、続く19年は同+9.4%が予想されています(予想はトムソン・ロイターズI/B/E/S、18年10月31日現在)。一方、日本の予想経常利益増益率は、18年度(19年3月期決算)が前年度比+9.5%、19年度(20年3月期決算)は同+8.1%の見込みです(東証1部除く金融、QUICKコンセンサスベース、18年10月31日現在)。業績は概ね良好ですが、米中間の貿易摩擦には引き続き注意が必要です。

 

<債券>

 

米国では、利上げやFRBの資産圧縮など金融政策を正常化する動きが継続する見通しです。長期金利には上昇圧力がかかると考えられますが、インフレが抑制された状況が続くと予想されることから、小幅にレンジを切り上げる程度にとどまりそうです。

 

欧州では、ECBが18年末に量的緩和政策を終了し、19年秋以降に利上げを実施する見込みです。インフレが緩やかに持ち直していくとともに、長期金利も徐々に水準を切り上げていくと予想されます。

 

日本では、日銀の緩和的な金融政策が長期化する見通しです。債券需給の逼迫もあり、長期金利は低位での安定した推移が予想されます。米国など主要国の社債市場は、企業の堅調な業績などを背景に、社債スプレッドは安定的に推移する見通しです。

 

<為替>

 

米景気の強さや日米実質金利差(米ドル高円安要因)と、日本の経常黒字、米国の双子の赤字(米ドル安円高要因)の綱引きとなり、円の対米ドルレートはレンジ内での動きが見込まれます。

 

対ユーロでは、堅調な域内経済やECBの金融緩和縮小の方針がユーロの支援材料になると予想されます。一方、豪ドルの対円相場は、豪州景気の堅調さが増すと見られること、先行きは豪日間の金利差が広がると予想されること等を踏まえると、今後、底堅い推移が見込まれます。

 

<リート>

 

利上げの継続、FRB資産の圧縮などから、米長期金利は小幅にレンジを切り上げる見通しですが、金融環境は依然として緩和的です。相対的に高い利回りを求める投資家からの需要が根強いことが、引き続きグローバルリート市場をサポートすると考えられます。世界的な景気拡大と低金利環境の下で、グローバルリート市場は底堅い展開が予想されます。

 

(2018年11月2日)

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