3.景気動向
<現状>
米国は、18年7-9月期の実質GDP成長率が前期比年率+3.5%となり、4-6月期の同+4.2%からは鈍化したものの、高成長を継続しました。
欧州は、18年7-9月期の実質GDP成長率が前期比年率+0.6%にとどまり、4-6月期の同+1.8%から大幅に鈍化しました。
日本は、18年4-6月期の実質GDP成長率が前期比年率+3.0%と、2四半期振りにプラス成長となりました。
中国は、18年7-9月期の実質GDP成長率が前年同期比+6.5%となり、政府の成長率目標である同+6.5%前後に沿った結果となりました。
豪州は、18年4-6月期の実質GDP成長率が前期比年率+3.5%と、7四半期連続のプラス成長となりました。
<見通し>
米国は、財政支出増加や減税に支えられ、当面は個人消費を軸に順調な成長を続ける見通しです。
欧州は、米中貿易摩擦やトルコ経済悪化等の影響はあるものの、消費や建設活動に支えられ、緩やかに成長を加速させる見通しです。
日本は、良好な雇用・所得環境を背景とした内需の拡大から、緩やかな成長軌道を辿ると見込まれます。
中国は、貿易摩擦の影響を受けるものの、政府による経済政策やIT産業の高成長により、安定した成長を続けると予想されます。
豪州は、資源セクターの調整が一巡するため、景気拡大の足取りが、より力強さを増す見込みです。
米国の実質GDP成長率
欧州の実質GDP成長率
4.企業業績と株式
<現状>
S&P500種指数の18年10月の1株当たり予想利益(EPS)は175.42米ドル(前年同月比+22.1%)と、24カ月連続で過去最高を更新し、かつ12カ月連続で前年同月比二桁の伸びとなりました。東証株価指数(TOPIX)の予想EPSは134.72円(同+13.7%)と、17カ月連続で二桁の伸びとなりました(いずれも予想はトムソン・ロイターズI/B/E/Sベース)。
10月の米国株式市場は、S&P500種指数で前月比▲6.9%と月次ベースで今年最大の下落率となりました。米中貿易摩擦への警戒感に加え、米長期金利の上昇や業績に対する懸念が強まったこと等が背景です。一方、日本株式市場も日経平均株価が前月比▲9.1%と月次ベースで今年最大の下落率となりました。軟調な米国株式市場の動きに加えて、中国経済と企業業績に対する懸念が下げを加速しました。
<見通し>
S&P500種指数採用企業のEPSは、18年が前年比+23.8%、19年が同+9.4%の増益が予想されています(18年10月31日現在、トムソン・ロイターズI/B/E/Sベース)。一方、日本の経常利益増益率は18年度(19年3月期決算)が前年度比+9.5%、19年度(20年3月期決算)が同+8.1%と予想されます(東証1部除く金融、QUICKコンセンサスベース、18年10月31日現在)。10月に株価は大幅に調整しましたが、業績予想はおおむね好調を維持しています。日米株式市場は、大幅な株価調整によって、利益との関係から割安感も台頭しています。今後は、まずは11月6日に予定されている米国の中間選挙の結果を見極める必要がありそうです。
EPSと株価指数の推移(米国)
EPSと株価指数の推移(日本)
5.金融政策
<現状>
FRBは、9月25日、26日に開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利(FFレート)の誘導レンジを2.00%~2.25%へ、0.25%引き上げることを決定しました。
欧州中央銀行(ECB)は、10月25日の理事会で政策金利、預金ファシリティ金利(金融機関が手元資金をECBに預け入れる際の金利)をそれぞれ0.00%、▲0.40%に据え置きました。量的緩和政策である資産購入プログラムについては、予定通り10月に規模を現行の月間300億ユーロから同150億ユーロへと縮小し、2018年末まで継続する方針です。
日本銀行は10月31日に開催した金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決定しました。長期金利の操作目標である10年物国債利回りをゼロ%程度に操作する金融調節を継続し、長期国債を買い増すペースも引き続き年間約80兆円を目処にします。
<見通し>
米国では、景気、雇用が順調に拡大していることから、3%程度と推計される中立金利を目処に緩やかなペースでの利上げが継続される見通しです。
ユーロ圏では、18年末に量的緩和が終了した後も、しばらくECBは再投資により国債等の保有残高を維持する見込みです。政策金利は19年9月に預金ファシリティ金利の引き上げ、同年12月には主要リファイナンス金利の引き上げが予想されます。
日本は、経済が緩やかな拡大を続け、物価上昇率は高まるものの、日銀が目標とする2%に到達するには時間がかかる見通しのため、当面、金融政策を据え置く見込みです。
各国・地域の政策金利の推移
(2018年11月2日)