日経平均株価は年初来高値
規模別では大型株が優位
■日本株式市場は堅調さを取り戻しました。米国が9月18日に発動を表明した対中制裁関税第3弾の年内税率が想定よりも軽微であったことで一旦悪材料が出尽くしたことや円安傾向が強まったことなどが背景です。日経平均株価は10月2日に2万4,270.62円と年初来高値を更新し、昨年末からの上昇率は+6.6%となりました。
■一方、TOPIX(東証株価指数)の上昇率は同+0.4%にとどまりました。主要な規模別指数の変化率を見ると、TOPIX 100(大型株)が同+2.1%と上昇したものの、TOPIX Mid400(中型株)が同▲1.6%、TOPIX Small(小型株)が同▲2.7%と、中型株、小型株の回復が遅れています。
■1株当たり予想利益(12カ月先)の前年比伸び率をみると、大型株の緩やかな上昇に比べて、中型株は鈍化傾向が続き、小型株は+10%台の伸びにとどまっています。業績の伸びに勢いがないことなどが中型株、小型株の上値を重くしている要因と考えられます。
規模別株価指数の推移
1株当たり予想利益の前年比伸び率
2018年度の経常利益は9%成長
小型株は2桁成長が19年度も続く
■QUICKコンセンサスベースによれば、9月末現在、東証1部(除く金融)の2018年度経常利益は前年度比+9.4%と好調に推移する見込みです。中でも、TOPIX Small(小型株)は全産業(除く金融)ベースで前年度比+16.1%の経常増益が見込まれています。TOPIX Smallは19年度も同+10.2%の増益が予想されており、小型株の企業収益を巡る環境は明るさを維持すると期待されています。
経常利益伸び率の見通し
小型株のリビジョン・インデックスに改善の兆し
■今後の日本株式市場の動向を考えるうえで、国内要因では10月下旬以降に発表が予定されている18年度の中間決算(4-9月期)と18年度通年の見通しが注目されます。足元では年初よりも円安・米ドル高が進んでいることも業績の上振れ期待につながりやすい環境となっています。
■今後の上振れ期待の可能性を確認するために、規模別に足元の株価と業績モメンタム(上振れの勢い)(リビジョン・インデックス)の関係を確認します。
■TOPIX 100(大型株)は株価とリビジョン・インデックスの関係が比較的はっきりと確認できます。足元の米ドル/円レートが1米ドル114円台に乗せるなど、輸出企業が多く含まれるTOPIX 100の業績には追い風になりそうです。ただ、米中貿易問題や日米通商交渉は年明け以降に議論が加速することから、不透明感が残ります。
■TOPIX Mid400(中型株)は足元の業績モメンタムに勢いがありません。リビジョン・インデックスと株価の関係からはやや頭の重い展開が続きそうです。
■TOPIX Small(小型株)は業績モメンタムの変化に株価が敏感に反応しています。リビジョン・インデックスは2013年から2015年に緩やかに上昇し、2017年は堅調に上昇しました。両局面で株価は大きく上昇しました。TOPIX Smallは、①銘柄間の利益成長格差が大きい、②流動性が限られる、などの特徴があるためリビジョン・インデックスの上昇に株価は敏感に反応している可能性があります。TOPIX Smallのリビジョン・インデックスは足元で底打ちから反転の兆しが見え始めており、業績予想の上振れと株価の上昇が期待できる環境が整いつつあるようです。
TOPIX 100のリビジョン・インデックス
TOPIX Mid400のリビジョン・インデックス
TOPIX Smallのリビジョン・インデックス
(2018年10月04日)
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