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小規模M&Aの経験が「ビジネス感度」を高める
日本神話では「三種の神器」は、天照大神から授けられた「鏡・勾玉・剣」でした。筆者が社会人になった1990年代では、「英語・IT・会計」であると上司からいわれたものです。正直、どれも苦手で大変苦労しました。
しかし最近では、その神器は「コミュニケーション」「情報」「金融リテラシー」「テクノロジー」等へと、時代の変化とともに変わりつつあるようです。そこに「M&A関連知識」を加えることを提唱したいと思います。その理由は、M&Aに必要とされるスキルは、ビジネスマンとしてだけでなく、人としても大きく成長させてくれる可能性を秘めているからです。
M&Aというと、大企業の経営企画部メンバーなどが関与する、敷居が高いビジネス領域だと思われがちです。決してそうではないのですが、M&A関連ニュースや新聞記事を見ると、そう感じるのは無理もないかもしれません。通常、新聞・雑誌・Webで目にするM&A情報は、ほぼ上場企業のIR活動の延長にある情報なのです。しかしながら、小規模のM&A件数は急速に拡大しています。
非上場、中小企業のスモールM&Aがニュースになることはめったにありません。情報開示の義務がなく、さほどメリットもないためです。それゆえにM&Aは縁遠いと感じているビジネスマンが多いかと思いますが、小規模M&Aの世界はとても身近で、関与する方々は多くの副次効果、メリットを得ることができるのです。それを以下に説明したいと思います。
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「リアルで生々しい財務」に触れることができる
財務や会計・税務を座学で覚えても、肌感覚で習得することは簡単ではありません。小規模M&Aでも、「財務」は無視することができない必須科目です。苦手意識を持つ方も多いかもしれませんが、小規模M&Aにおける譲渡企業のサイズは売上数億円規模であり、事業もシンプルで理解しやすいケースがほとんどです。複雑な管理会計や連結会計などの知識はあまり必要ありません。
さらに、決算書を作っているオーナー社長に直接質問ができるリアル感もあり、理解度が深まるでしょう。難解な会計書籍を読むよりも、まずは小規模M&A1件の経験を積み、リアルな現場感覚を磨くほうが、習得度が高まるのは間違いありません。
ビジネス感度が研ぎ澄まされる
小規模M&Aにおいて、財務以上に大事なのがビジネス面の分析です。売上の源泉は何か、どうして存在できているのか、数字に表れない定性評価ポイントは、課題は……などと頭と感性をフル回転して、対象企業を見る必要があります。
大事な「お金」を投資するのですから、単に取引先を分析するのとはリスク感度が違ってくるはずです。本来であれば、このようなビジネス感度は自ら事業を立ち上げ、トライ&エラーを繰り返して覚えるものですが、M&Aでそのエッセンスを体験できるのです。
人間ドラマを通じ、難解な契約書も頭に入ってくる
財務と並んで、M&Aのデューデリジェンスの肝であるのが、法務関連です。秘密保持契約書からはじまり、基本合意契約書、譲渡契約書という取引に必要な契約書作成と、対象企業のリスク判断をするための各種契約書チェック(雇用契約、取引契約、業務提携契約等)が、短期間で怒涛のように押し寄せてきます。
弁護士や社内法務担当に丸投げという選択肢もありますが、ぜひ一度は当事者として踏み込んでみてください。最終合意に近づけば近づくほど、お互いの本音がじわじわと出てきますので、面白い人間ドラマが見られるかもしれません。
マネジメント能力、人間力が磨かれる
M&Aの難しいところでもありますが、扱うのが法人・事業であるため、多くの場合に「人」がついてきます。不動産や金融商品との違いがここにあります。よって、投資リターンを高めるためには、買い手側のマネジメント能力、人間力が問われてきます。
これまで、多くのスモールM&Aに関与してきた方々を見てきました。もともとは人を責めるようなタイプでも、褒めることや相手を認めることを覚えざるをえない状況に陥り、人が変わってくるケースも多々見受けられます。人間力は、決して教えられて習得できるわけではなく、経験や挫折を経て磨かれるものだと思います。
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もし貴方が、会社員、士業、コンサルタントなどで誰かと比較されるような立場にいるのであれば、M&Aスキルを身につけることをおすすめします。依頼主である経営者から見た場合、M&Aに必要なスキルである財務・ビジネス・法務が分かっている方はきっと重宝されるはずです。
当然ながら、短期的な人の評価というものは、その時々の環境も大きく左右されます。しかし、ビジネスマンとして必要な足腰をM&Aで鍛えることは、長い目でみれば帳尻があってくるに違いありません。これまで会ってきたM&A関係者も、それぞれの持ち場で皆さんイキイキとしています。転職、独立した方が多いかもしれませんが、会社に残っている方も、M&A担当を外れてもそれぞれの分野で活躍されている方が多い印象を受けます。
ビジネススクールや書籍でM&A関連知識を学ぶのもいいですが、まずは一件でも事業承継・M&Aのサポートを経験することはビジネスマンとして大きなメリットにつながるでしょう。
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