「利益額と利益率」で分析・判断するビジネスの成果
リュート先生:実数で大まかな傾向が分かったら、今度は比率分析でもうかりやすさの効率を見ていこう! 比率分析というのは、売上に対して何パーセントくらいもうけを出せているかを考えることです。売上総利益率、営業利益率、当期純利益率、それぞれの段階について見ていきますよ!
理郎:先生、これまでやってきた数年間の実数傾向分析と、比率で分析するのは、どういう違いがあるのですか?
リュート先生:ビジネスの結果がもうかっているかどうかについては、「利益額」という金額の大きさで判断する視点と、「利益率」という売上に対する利益の割合でもうかりやすい仕組みになっているかどうかという視点の2つがあるのです。例えば純利益が1億円あると聞いて、もうかっていると即座に判断できますか?
明日実:それはもうかっているんじゃないですか! 1億円欲しいー!
順子:ちょっと待って、1億円の利益を出すのに、いくらの売上が必要だったかという視点で見れば、実はあまり割のいいビジネスとはいえない場合があるっていうことですか?
リュート先生:鋭いね!その通りで、仮にこの会社が売上1,000億円の会社だとすれば、その0.1%しか利益が残らないのは、もうかりやすいビジネスとはいえないということだよ。
例えば売上1億円で、純利益が5,000万円のビジネスがあったら利益額は前の例の半分しかないけど、売上に対して50%利益があるのだから、とても割のいいビジネスといえるし、分配される報酬も大きいはずだよ。
順子:なるほど。そこで売上に対する利益の比率で見るわけですね!
「利益額」は業界標準や競合他社と比べて良否を判断
リュート先生:そうだね。まずは売上に対する売上総利益の比率である売上総利益率から見ていこう。これは粗利益率、あるいは「アラリ」とも呼ばれて頻繁にビジネスの現場で使われるんだよ。
[図表1]Gross profit margin(売上総利益率/粗利益率)
理郎:Gross profit margin(売上総利益率/粗利益率)は、Gross profit(売上総利益)を Sales(売上)で割るんですね。つまり売上が100だとしたら、その何パーセントが利益なのか?という計算をするんですね。ところで、だいたい何パーセントくらいがいい会社なんですか?
リュート先生:いい質問だね!まあだいたい悪くても30%くらいはあってほしいという目安はあるけど、実は、何パーセントがいいかどうかというのは、その会社がいる業界や、ビジネスの仕組みである業態によって全然違うから、同じ業界の競合他社と比較しないとはっきり言えないんだよ。
理郎:なるほど、業界標準や競合他社との比較で判断するんですね。ところで30%くらいはほしいというのは、どういう理屈なんですか?
リュート先生:それはね、この売上総利益の下は、もうほとんど費用項目で、引かれていくだけだから、この時点で30%くらいの利益がないと、純利益まで段階的に人件費や広告宣伝費などを引いていったら、普通は利益が残らないっていうことなんですよ。
理郎:実数分析でやったように、この Gross profit margin(売上総利益率)を高めようとするなら、Sales(売上)を増やすか Cost of sales(売上原価)を下げるか、またはその両方をやればいいってことですか?
リュート先生:その通りだよ。よく勉強していて素晴らしいね!もし競合と比べてこの比率が劣っているなら、売上で負けているか、または仕入れ交渉や、製品を作るコストの効率で負けているかのどれかなので、1つずつ検討して、勝ちやすいところで勝てるように直すんだよ。では、次に Operating profit margin(営業利益率)を見てみよう。
順子:Operating profit margin は、Operating income(営業利益)を Sales(売上)で割るんですね。つまり売上を100とした場合に、その何パーセントの営業利益を取れているかを見るんですね。
[図表2]Operating profit margin(営業利益率)
リュート先生:その通りだよ。これも競合他社と比較して判断するんだけど、例えばGross profit margin(売上総利益率)が競合他社と比較して遜色ないのに、Operating profit margin(営業利益率)がぐっと下がってしまうのであれば、それは Distribution costs(販売費)や Administrative expenses(一般管理費)など、費用の使い方が競合他社より下手なんだということです。
理郎:なるほど、そうしたら、販売費や一般管理費を1つずつ見ていって、無駄な費用や効率が悪い費用の使い方を変えていけばいいんですね!
リュート先生:そうそう!今多くの会社で進められている AI やロボットの導入は、費用の中でもかなり大きい人件費を減少させるためのものなので、営業利益を増やすための努力なんだよ。
明日実:先生、それって大変じゃないですか!働く場所が AI やロボットに取られちゃう。(※)
※マイケル・A・オズボーン、カール・ベネディクト・フライ「雇用の未来─コンピューター化によって仕事は失われるか?」 http://www.oxfordmartin.ox.ac.uk/publications/view/1314
リュート先生:だから、AIやロボットでは取り替えができないような高度な判断業務やビジネスを創りだす仕事、人をつなぐ仕事などを自分のキャリアの中に入れていくことがこれからは大事なんだよ。さあ、いよいよ最終段階の Net income margin(当期純利益率)を見ていこう!
[図表3] Netincomemargin(当期純利益率)
順子:先生、Operating income(営業利益)と Profit for the year(当期純利益)の間には、Financial incomes and costs(金融収益および費用)と、Provision for income tax(法人税)がありますので、投資や融資でお金を上手に増やそうとしている会社や、上手に節税している会社は Net income margin(当期純利益率)が高いっていうことですか?
リュート先生:その通りだよ!だからここは財務部や経理部の腕の見せどころなんだよ。
<まとめ>
◎もうかりやすさを判断するには「利益額」と「利益率」という2つの視点がある。
◎利益額は、業界標準や競合他社と比べて良否を判断する。
◎3段階の利益率で分析すると、どこを直せばもうかりやすくなるかがはっきりする。
<学んだことを明日の会社で生かすためのヒント>
◎まずは自分の会社について、売上総利益率、営業利益率、当期純利益率を計算してみましょう。
◎次に、競合他社のそれぞれの利益率について直属の先輩や上司に聞いてみましょう。「なんでそんなこと聞いてくるの?」と聞かれたら、「もっと競合他社よりもうかる会社にしたいんです」などと答えましょう。