Income statement(損益計算書)の定義とは?
リュート先生:さて、いよいよ損益計算書の定義と大まかな形について学んでいきましょう。
損益計算書には、 Statement of profit or loss と Income statement という2つの呼び方がありましたが、ここでは覚えやすい Income statement を使って話を進めていきましょう。
まずは、以下の定義を見てください。
<Income statement(損益計算書)の定義>
Income statement :
The purpose of the income statement is to show how well or
poorly a company performed during the last accounting period.
リュート先生:この定義を見ると、「損益計算書の目的は、前期の会社の活動結果について、良かったのか、悪かったのかを表すこと」と書いてありますね。まさにこれが損益計算書の目的で、完成された損益計算書を見れば、去年1年間や、速報としては直近3カ月の頑張った結果が良かったか悪かったかがすぐ分かるのです。
名瀬:なるほど。会社がもうかったかどうかの成績表みたいなものですね。何年か並べて比べると、会社の歴史的な流れが見えてきそうですね!
リュート先生:まさにそのように何年分かを並べて、傾向を分析していくのに使うのです。当然単年度でもうかっているかどうかも分かりますよ。
理郎:ライバル会社と比べたりすることもできますか?
リュート先生:もちろんできますよ!細かく比較していくと、ライバル会社にどういうところで勝って、どこで負けているのかもよく分かります。
構造を分析する上でポイントとなる「項目の順番」
さあ、それでは、 Income statement の全体の形について見ていきましょう。下の図を見てください。
[図表]Income statement の構造
リュート先生:これが Income statement の基本的な形です。皆さんにぜひおススメしたいのは、この通りの図を手で書いてみることです。
重要なことは、収益を示すいくつかの利益項目のそれぞれの意味と、各項目が上から何番目に配置されているかを正確に覚えることです。どの利益項目かによって、もっと利益率を高めていくために考えることや、やるべきことが違うからです。
理郎:いくつかの利益項目っておっしゃいましたが、会社のもうけは1つではないのですか?
リュート先生:会計知識のない人たちが、「会社のもうけ」という場合は、だいたい Income statement の一番上の「売上」か、一番下の「最終利益(当期純利益)」のことを考えています。
しかし、それではあまりに大ざっぱすぎて、どの利益なのか特定されないと、それを増やすにはどうしたらよいかなどについて、具体的に打てる手が考えにくいのです。
複雑なものは分解して考えるというのがビジネスを直す(改善する)基本です。そこで、 Income statement では、一番上に配置した売上から、その売上を上げるために使った費用や、商品を仕入れたときの仕入値(原価といいます)を段階的に差し引きながら、いくつかの利益項目を作っているのです。
このいくつかの利益項目名を使えば、共通の認識の中で、どんな手を打てば状況が良くなるのかということを相談することができるのです。
順子:そうなのですね。それでは Income statement の項目は、上から順番に覚えていけばよいのですか?
リュート先生:その通りです。まずは全体の構造について上からざっくり説明します。その後で、複数年のデータのチェック方法をご紹介しながら、より詳細な考え方について見ていきましょう。
まず、 Income statement の一番上には Sales(売上)がありますが、これは、お客さまに何か商品かサービスを販売した結果の合計金額です。会社の使命は売上を伸ばして成長することです。
2番目には Cost of sales(売上原価)という項目がありますが、これは、販売するために仕入れた商品の仕入金額の合計です。製造業の場合には、製品が完成するまでに掛かった金額の合計となります。Sales から Cost of sales を引くと最初の利益項目である Gross profit(売上総利益/粗利益)が算出されます。
Gross profit(売上総利益)の下には、 Distribution costs(販売費)と Administrative expenses(一般管理費)という2つの経費項目が来ます。売上を上げるために使った費用が Distribution costs で、会社を運営するために販売活動とは直接関係なく使った費用が Administrative expenses です。Gross profit からこの2つの費用を引くと、2つ目の利益項目である Operating income(営業利益)が算出されます。これは本業で稼いだ利益を表す項目なのでとても大事です。
Operating income の下には Financial incomes and costs(金融収益および費用)がありますが、これは投資で稼いだ配当金(Dividends income)や、融資で稼いだ利息(Interest income)などの金融収益と、お金を借りて払った支払利息(Interest expenses)などの金融費用の、本業以外の金融活動の結果をまとめた項目です。Operating income に Financial incomes and costs の収益を足して費用を引くと、3つ目の利益項目である Profit before income tax(税引前利益)が算出されます。これは本業の力と金融活動のうまさの両方の結果となります。
この Profit before income tax から Provision for income tax(法人税)を引くと、4つ目の利益項目である Profit for the year(当期純利益)が算出されます。
<まとめ>
◎Income statement(損益計算書)の目的は、過去の会社の活動結果について、良かったのか、悪かったのかを表すこと。
◎Income statement では、一番上の Sales(売上)と、一番下の Profit for the year(当期純利益)の間にいくつかの利益項目がある。それぞれの利益項目を段階的に分析することで、よりもうかる会社にするためにどのように直せばいいのかを考えることができる。
<学んだことを明日の会社で生かすためのヒント>
Income statement の図を書いて、自分の会社の数字を当てはめてみましょう。すると、自分の会社ではどの利益項目でもうかっているのかがすぐに分かります。
自分の会社の状況が理解できたら、それを口に出して言えるようにしましょう。例えば「うちの会社は、売上や粗利益は伸びているけれど、営業利益の伸びが少ないですね」というような感じです。もし会社の偉い人に接する機会があったら、それをさりげなく言ってみましょう。そこに少し英語の用語も織り混ぜられれば、「お、この社員は会社の数字を理解していて、会計用語を英語でも分かっているのか!」などと評価されるかもしれません。