今後の不動産投資は「需要の創出」が重要に
前回述べたとおり、不動産流通業界に大きなパラダイムシフトが起こっているのと同様に、不動産投資にも大きな変化がやってきています。
第1の波は、高度成長期から1990年前半のバブル崩壊までの土地神話と呼ばれた時代。土地は値上がり続けるというキャピタルゲイン型(値上がり益追求型)不動産投資。
第2の波は、バブル崩壊後の債権処理から始まった、不動産流動化による不動産投資。1995年に投資家保護の観点から不動産特定共同事業法が制定され、2000年の資産流動化法改正から不動産の金融化が一気に加速、加えてJ-REITの発展もあり、不動産投資が個人にとっても身近になりました。不動産価格は、その不動産が現在から将来にかけて生み出す賃料(キャッシュフロー)を前提に価値を形成する、収益還元法という考え方が一般的になったのもこの時からです。
そして今、第3の波が来ています。これまでは将来価値を予測できることが不動産価値の前提ではありました。しかし今後人口が減少し、利用者側の価値観が多様化する日本において、不動産がいかに需要を創出できるか、時代の変化に対応できるかどうかが、不動産投資の重要な要素となってきています。
第1の波 バブル崩壊に至るまでの土地値上がり益を狙った不動産投資
第2の波 不良債権処理から始まり不動産証券化など金融手法を用いた不動産投資
第3の波 シェアリングエコノミー下での需要創出型の不動産投資
多くの人のニーズに応える「コワーキングスペース」
2018年、米国のWeWorkが日本初上陸し拠点を開設しました。コワーキングスペースとして起業家やフリーランスだけでなく、企業の商品開発部門や人事部門など、様々なニーズを持った入居者が集まってきています。
実際に見学してみて、開放感とコミュニティとしての一体感が演出されていることが分かりました。一人当たりの床面積賃料は決して安くありませんが、場所を借りるという目的以外で使われている方にとっては、十分払う価値があるようです。
これからの不動産は、単なる「空間」ではなく、何かを生み出す「場」として求められるのではないでしょうか。
また、スマートフォンの普及やIT技術の革新により、空いているスペースを有効活用することで、これまでにない収益機会も生まれてきています。
例えば、エアビーアンドビーに代表される民泊。筆者も最近海外で利用しました。インターネットで予約をして、電子キーを受け取り、誰にも会わずに部屋にあるiPadでチェックイン、チェックアウトを行います。自分の部屋のように利用することができるため、非常に快適でした。
上記のようなシェアリングエコノミーと呼ばれる経済活動が一般的になっていく過程で、これまでの不動産投資の考え方も見直す必要があるのです。
不動産投資も実需が基本…物件の目利きと管理が重要に
シェアが進んでいる一方で、2018年、新築でシェアハウスを建築し、高利回り商品として投資家へ販売していた会社が破綻しました。サブリースとうたっておきながら、実際は入居者が存在せず、資金繰りが回らなくなったのです。
不動産投資は、実際にそこで賃料を払う人がいるかどうかをきちんと見極めること、すなわち実需があるかどうかが重要です。
民泊については、日本では2018年6月の民泊新法により180日ルールが規定されました。今後は、近隣への配慮を含めた物件管理がされているか、信頼できる専門家がいるかが重要になります。
信頼できるプロと「共同事業」を行うのも手
弊社が取り組んでいる案件として、福岡初の住居との混在型宿泊施設「montan博多ホステル」があります。築30年の賃貸マンションをリノベーションして、1階部分をラウンジ共有スペースとし、賃貸の空室部分をグループ客が泊まれる宿泊施設に用途変更しました。宿泊者と住人、そして周辺にお住まいの方も一緒に交流できる、面白い物件となっています。
不動産の物件の目利きや運営管理の難易度が上がっていく中、これからの投資形態として、共同事業型の不動産小口化商品と呼ばれる商品が増えています。プロが運営管理する収益物件を複数の出資者で持つ仕組みで、少額で不動産を持つことが可能です。投資家保護の観点から法律で報告義務が定められており、複数の出資者で所有するのでチェック機能も働きます。
弊社はアセットシェアリングとして商品化していますが、各社それぞれの特色があり、今後の不動産投資商品の一つとして成長が期待されています。
[図表]アセットシェアリングの仕組み
今後の不動産投資は、不動産という物理的制約の中で、いかに最大限の収益性を出すことができるかという視点が重要となります。不動産のメリットをいかに生かしていくかで、保有の形も変わります。不動産もシェアして所有する時代の到来と言えるでしょう。