“不良資産”などの洗い出しを行う
会社を売ろうとするにあたって、誰しも少しでも高く売りたいと考えるのは当然でしょう。
人情として、マイナスにカウントしなければならない点にはつい目をつぶりがちです。つらい作業と感じるかもしれませんが、一度、総ざらいして点検しておくべきです。
無理な背伸びは逆効果ですが、決算書の数字には表れない部分も含め、プラスとマイナスをしっかりと認識し、事前に対策を講じる、アドバイザーや交渉相手の買い手に隠さず伝えるといった真摯な態度が求められます。
事実、「時価純資産+のれん代」の評価方法で概算20億円の基本合意契約に至ろうとしたものの、不良資産を峻別していなかったために、いざ洗い出しをしたときに“時価”では15億円の価値しか見出せない、といったギャップが生まれることがあります。
売り手のオーナー社長が不良債権をよく把握していなかった、または意図的に隠していたなど、さまざまな原因が考えられますが、極端な場合は、せっかくの“良縁”が破綻になることもあります。
不良債権化しがちな資産とは
では、どのような点が不良資産になりがちなのでしょうか。その時々によって価値が変わりやすい資産と合わせて把握しておきましょう。
①売掛金や貸付金
②在庫
③不動産
④ゴルフ会員権や有価証券など値動きの激しい資産
①は、トラブルなく全額回収できてはじめて帳簿の額面どおりの資産になります。商取引の中で、取引相手が潰れたり、債権の放棄や減額を要求されたりすることもあります。実質的に不良債権と化していないか、見直してみる必要があります。
②では、流行遅れの製品や過剰在庫に注意が必要です。今年は1着2000円で卸せたアパレル製品が、あっという間に流行おくれになり、翌年は2着で980円でしかさばけないこともあります。
③は土地や建物などですが、地価の下落や建物・付属設備の劣化などを冷静に評価すべきです。
④についても、損切りせずに持ち続けている投資有価証券や取引先の非上場株式などは、帳簿価格と実勢価格が大きく乖離しているケースもあります。
保有している資産の中身を、以上のような点に留意してよく見直します。
そのうえで、処分するかどうかをアドバイザーなどと相談すればよいでしょう。一例では、買い手が不要とする法人のゴルフ会員権などは、オーナー社長個人が会社から買い取ったりします。
処分するかどうかはケースバイケースで判断すればよいでしょうが、要は売り手であるオーナー社長が、資産の内実をよく洗い出して正確に把握しておくことが肝要だということです。