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ロシア・ビジネス特有の事情…複雑な企業グループ

本連載は、長年にわたりモスクワにおいて日本企業のロシア・ビジネスを支援してきた弁護士・松嶋希会氏の著書、『ロシア・ビジネスとロシア法』(商事法務)の中から一部を抜粋し、「ロシア・ビジネス」の基礎知識を詳しく説明します。

ロシアでのビジネス成功の鍵となる「パートナー選び」

適切な「パートナー」を選定することがビジネス成功の重要な要素であることは、ロシア・ビジネスでも変わりない。取引に入る前に、パートナー候補について情報を収集しどのような企業なのか理解しなければならない。

 

合弁事業パートナー、総合販売店、規模の大きい継続的な取引のパートナー、技術援助先などの候補企業については、専門の調査会社の活用が推奨される。

 

一般取引では、ロシア現地に拠点がありロシア人従業員がいる場合などロシア語情報を扱えるのであれば、ロシア政府が提供する各種データベースが役に立つ。専門調査会社によるほどの深度の調査は難しいが、一定程度パートナー候補を知ることができる。

 

ロシア語情報を扱えない場合、調査会社や情報提供会社に調査・英語報告書の提出を依頼することになる。

 

ロシア政府は、ビジネス・パートナーの選定に利用してもらうために、上場・非上場を問わず、企業に関する様々な情報をデータベース化しインターネットサイトで公開する取組みを進めている。特に、法人登記機関でもある連邦租税局は、そのサイトで「ビジネスリスク:自社および取引相手を調べましょう」と各種データベースを紹介している。特定サイトでの情報公開に法的効果が与えられている場合もあるので注意が必要である。

 

ロシア当局が提供しているデータベースは、ロシア・ビジネスの特徴を現しているが、一方で、ロシア・ビジネスの事情を知らないと有効にデータベースを活用できない。また、専門調査会社に調査を依頼したとしても、ロシア・ビジネスの事情を知らないと、その調査結果をどのように評価すべきか迷うことがあるかと思われる。

なぜ複雑な企業グループが形成されているのか?

ロシア企業の企業調査を実施すると、複雑な企業グループが浮かび上がってくることが往々にしてある。日本人が考える「企業グループ」のように、複数の会社が資本関係でグループを形成しているほか、「人」を通して会社が繋がっているグループも多い。

 

たとえば、家族・友人がそれぞれ会社を所有している場合や、それぞれの会社の出資者は異なるが、同一人物が全ての会社の社長を務めている場合がある。実質的なオーナーだと名乗る人物が企業グループの調査結果に出てこないことも、逆に、企業グループを深く調べると、交渉をしている人物とは別に、実質的なオーナーが存在していることが判明することもある。

 

入り組んだ企業グループを形成する目的が、脱税やマネーロンダリングといった正当ではない目的の場合がある。グループを複雑にし、会社情報の公開義務がない国にグループの最上位会社を設立して、実質的オーナーを隠しているということもある。

 

リスクを分散するなど、合理的なビジネス判断に基づく場合もある。特定のビジネスに発生した問題が他のビジネスに影響を与えないようにするため、たとえば、資産保有会社と事業運営会社を分ける、会社を役割ごと、ビジネスごと、ブランドごとに分けて設立する、会社を地域ごとに設立するのである。

 

特に、ライセンスを要する事業を行っている場合、別の事業の問題が原因でライセンスを剥奪されないように、ライセンス事業会社を他事業から独立させる必要性は高い。

 

企業グループの上位を、英領ヴァージン諸島やサイプロスなどの外国企業が占めていることもある。外国企業が企業グループに含まれる点は節税を目的とする場合や、ロシア外で取引をすることによりロシア法の適用を避ける場合がある。また、ロシア外に財産を保有することでロシア政府による接収を回避するという、政治・経済が不安定であった歴史に基づくメンタリティも感じる。

 

ロシア法上、一人会社による一人会社の設立が認められていないことも、企業グループを複雑にしている一因と思われる。A会社の100%子会社であるB会社が、子会社を設立しようとする場合、B会社が100%出資して会社を設立することは認められず、一緒に出資をする第三者が必要となる。この場合、たとえば、企業グループの他の会社や親会社であるA会社、または、代表者個人が、1%や10%といった出資をする。

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 弁護士

アンダーソン・毛利・友常法律事務所所属。2001年弁護士登録、2004年英国University of Sheffield (LL.M.)修了。

2005年から2008年まで、日本ODA事業であるウズベキスタンに対する法整備支援事業(倒産法)に従事(2016年4月から2007年10月までウズベキスタン駐在)、2010年6月から2017年4月まで、PwCロシア・モスクワ事務所において、ロシア、ウクライナ、カザフスタン、ウズベキスタン等CIS諸国の日系ビジネスを支援。

著者紹介

連載進化する「人口1億4000万人市場」…ロシア・ビジネスの基礎知識

 

ロシア・ビジネスとロシア法

ロシア・ビジネスとロシア法

松嶋 希会

商事法務

長年にわたりモスクワにおいて日本企業のロシア・ビジネスを支援し、ロシア経済の浮沈を経験した筆者が、これまでに培ったM&Aや債権回収などの案件についてのノウハウをまとめたものである。ロシア・ビジネスを始める企業にと…

 

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