前回は、相場格言から学ぶ「売りの具体的なタイミング」の図り方について取り上げました。今回は、最もよく知られる2つの相場格言から、「売る」ことの大切さを見ていきます。

利食いでも損切りでも、とりあえず売って金額を確定

本連載の第1回でも説明したとおり、売りに関する相場格言で最も知られているものは「利食い千人力」と「見切り千両」ではないかと思います。

 

前者は「とりあえず、利益を確保することが重要」という意味で、利益が出ているときに使います。また後者は、「損切りであっても千両に値する」ということで、含み損を抱えているときによく使う表現です。

 

つまり、利食いであっても損切りであっても、とにかく売って利益や損失の金額を確定させることが大切だということです。私自身、株の学校の生徒には、「利益確定はいつでも正解だし、損切りもまた正解ですよ」と日頃からよく言っています。

 

ただし、なんでもいいからとにかく急いで売ったほうがいい、ということではありません。あくまで、チャートの形や移動平均線と株価の位置、その他の材料など総合的に判断して、売る根拠があったときには速やかに売るべきだ、という意味です。

 

いちばんいけないのは、持っている根拠がなくなっているのに持ち続けることです。特に含み損の状態だと、何の根拠もないのに「明日は戻るだろう」と考えがちです。確かに、明日になれば株価は上昇して含み損は解消、あるいは減少するかもしれません。

 

しかし、その可能性があったとしても、持ち続ける根拠がもうないのであれば、とりあえず損を出してしまったほうがよいのです。

 

過去の経験則に照らしても、含み損になっているときにはさっさと売ったほうが正解というケースが多いと感じています。そのタイミングで損切りができなければ、結局「売るに売れない」ところまで下がって、塩漬け状態にしてしまうことになりかねません。

買値より「売って手に入る現金」を考える

2012年12月からのアベノミクスで全体的に株価が大きく上昇したので、株の学校の生徒からも以前ほど「塩漬け株に困っている」という話は聞かなくなりました。とは言え、今も含み損を解消できずに塩漬け株を抱えている人もいるのではないかと思います。

 

米相場の格言ではありませんが、塩漬け株を解消するのに覚えておきたい言葉があります。それは、「買値を忘れる」です。

 

いくらで買ったのか、今ここで売るといくらの損失が確定するのか。その金額にとらわれていると、なかなか損切りができないものです。

 

そこで発想を転換します。買値のことを考えずに、「今売ったら(損切りしたら)、いくらの現金が手に入るのか」と考えるのです。

 

たとえば、もともと300万円で購入した株が、100万円の含み損になっているという場合。「今売ったら100万円の損が確定する」ではなく、「今売ったら200万円の現金が自由に使えるようになる」と考えます。

 

自由に動かせるお金が急に200万円入るとなったら、その先の選択肢は非常に多くなります。後は、時間をかけてその200万円を元の300万円に、そしてそれ以上に増やしていけばいいだけです。

 

ただ、再び含み損になって損切りする・・・というのを繰り返してしまうと、資金はどんどん減っていきます。だからこそ、次の取引では、買いの根拠がある「買い場」で買うことを徹底する必要があるでしょう。

 

ちなみに、「買値から〇パーセント下落したら損切り」という考え方がありますが、私はあまり意味がないと考えています。「〇パーセント」の数字には何の根拠もないからです。

 

また買ったときの株価の位置が押し目なのか、底値だったのかによっても損切りの考え方は違ってきます。

 

あくまで、「売る根拠、理由があるから、含み損であっても売るのだ」と考えたほうがよいでしょう。

チャートで見る「見切り千両」の例

ここでは、「見切り千両」(意味:損切りであっても千両に値する)の例として、2015年11月下旬からのNECのチャート、また新日鐵住金のチャートを取り上げます。

 

また、ご自身が実際に「うまく損切りができなかった」という銘柄があれば、そのときのチャートを見て、どこで見切るべきだったかを考えるのもよいのではないかと思います。

 

[図表1]NEC(6701)

 

 

[図表2]新日鐵住金(5401)

「江戸のウォーレン・バフェット」に学ぶ 常勝無敗の株投資術

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清水 洋介

幻冬舎メディアコンサルティング

「どうもうまくいかない」「なかなか儲からない」これこそ株式投資で誰もが必ず直面する問題……。 そんな悩みを解決すべく、時代を超えても通用する、先人たちの投資成功術をまとめた一冊。 どんな時代にも通用する「株式投…

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