「やる気」はあまり重要視すべきものではない
勉強を続けるためにはやる気、モチベーションが重要だと考える人は少なくありません。「どのように勉強のモチベーションをキープすればよいでしょうか」という質問は、高校生だけでなく、社会人の学習者からもよく聞かれることです。
確かにやる気はないよりあるに越したことはありませんが、あまり重要視すべきものでもありません。
なぜなら、「やる気があるから勉強する」というのは、裏を返せば「やる気がなければ勉強しない」ということだからです。そのような不安定なことに頼るのはあまり得策ではないのです。
勉強を続けるために本当に重要なのは、「やる気がなくても続けられる仕組み」を持っておくことです。
受験勉強に取り組むということは、定期テストのために一夜漬けをするということとは違います。たった一晩頑張るだけなら、やる気に任せたがむしゃらさで乗り切るということもあるかもしれませんが、時には数年を要することもある長丁場を、ずっとやる気に満ちた状態で過ごすのは不可能です。
落ち着いた状態で、ごく自然に学習を続けるためにどのような仕組みを作るか、ということにフォーカスするほうがよほど成功に近づけます。
現に、医学部や難関大学に合格していった生徒で「やる気があるときだけ勉強していた」という人を、少なくとも私は見たことがありません。いつも決まった時間に、必要な量を着実にこなしていく、そんな生徒が多いものです。
「勉強しなさい」と子どもに言う母親。
その言葉に対して、「やろうと思っていたのに。今の一言でやる気がなくなったよ」と言う子ども。
そんな会話を耳にしたことはありませんか。
やる気は文字どおり、その日、その時のさまざまな状況次第で変化します。人の気持ちはさまざまなこと、しかもほんのささいなことで揺れ動き、落ち込んだり、盛り上がったりを繰り返します。
親に叱られたり、友達とケンカしたり、好きな人に振られたり・・・。低気圧の接近や、季節の変化によって気分が落ち込む人も少なくありません。逆に、誰かに褒められたり、好きなものを買ったり、おいしいものを食べたりといったプラスの働きがあれば、何でもうまくいくような気分になります。
しかし、気分が上がることが毎日起きるとは限りませんし、プラスに働いた効果がいつまでも続くわけでもありません。多種多様な原因から上がったり、下がったりを繰り返すやる気を頼みにしていては、毎日の勉強がはかどるはずがないのです。
やる気を重視しすぎるあまり、やる気を出すコツやモチベーションアップ術を学ぼうとしたり、そればかり気にすることも賢明ではありません。必要なのは、「やる気がないときでもやれる仕組みを持つこと」です。
洗顔や歯磨きのように、学習を「習慣化」する
気分が乗らないときでも、少しくらい嫌なことがあったときでも、逆にうれしいことがあったときでも、それに影響されることなく決まったことをしっかりと実行できる。やる気に左右されないというのは、そのような安定感を作ってくれるものです。
やる気に左右されずに学習を継続できることはなにも、「強い気持ち」や「努力の才能」といった精神的なものによって成し遂げられるものではありません。学習の継続を達成させているのはむしろもっと技術的なものです。
今までやっていなかったことを、新しく習慣にすることを難しいと感じる人もいるでしょう。しかし、私たちは誰もが、習慣を身に付けることができます。
例えば、朝の洗顔や歯磨きのことを考えてみてください。子どもの頃から繰り返すことで身に付いた生活習慣は、生涯を通して続く場合がほとんどです。洗顔、歯磨き、シャンプーの方法、体の洗い方、そんな一つひとつの行動を、やる気を意識しながら行う人はいないのではないでしょうか。
たいていの人は、今朝はやる気が出ないから歯磨きはやめておこう、とは思わないはずです。人によっては、スマホでLINEのチェックをするのも同じことかもしれません。チェックしなければいけないと意識している人は少ないはずです。
意識して取り組むのではなく、無意識のうちに体が動いていることが習慣。人の活動の8割は、習慣化した行動=ルーティンで成り立っているという説もあります。ルーティンは身に付けるまでは時間がかかる場合もありますが、いったん身に付いてしまえば、そうそう失われることはないのです。