MLSとは
MLSとは「Multiple Listing Service」の略称であり、全米各地の不動産協会が運営している、アメリカにおける不動産情報データベースシステムのことを指します。MLSには、不動産協会に加盟している不動産会社が仲介依頼を受けた売り物件の概要や販売状況、そして所有者や過去の取引価格から固定資産税評価額まで、不動産に関するありとあらゆる情報が登録されています。
アメリカで不動産の仲介業務を行うほとんどの業者は、各地域の不動産協会に所属しており、アメリカ全土で約800もの会員組織が存在しています。MLSを持つ会員組織から除名されれば、対象地域の不動産情報にアクセスできなくなるため、事実上その地域での不動産業務を行うことはできない状態になってしまいます。アメリカで不動産業務を行う上で、MLSの会員組織に属するということは必要不可欠なことなのです。
アメリカの不動産業界においてMLSが果たす役割
アメリカの不動産業界において、MLSは「透明性が高く開かれた不動産取引」のために、非常に重要な役割を果たしています。
会員組織に属する不動産業者だけが利用できるMLSでは、間取りなどの基本情報に加え、公図、登記履歴、税金履歴が確認できます。さらに洪水マップや人口統計、そして学校区などの情報、近隣の物件情報や関連する国勢調査データまで、MLSデータベースをチェックすれば、ありとあらゆる角度から「消費者が知りたい情報」を充分に把握することができるのです。
不動産業者経由での情報開示という形にはなるものの、消費者が不動産取引を行うにあたり、必要な情報が得られるMLSの有用性は極めて高いといえるでしょう。
日本でMLSの導入は実現可能か?
アメリカの不動産取引において、消費者が知りたい必要情報を得ることができるMLS。 これに対し、日本においても「レインズ(REINS)」という不動産業者間物件情報交換ネットワークシステムが存在しています。
しかしレインズで得られる情報は、物件の住所や価格帯、間取りなど、不動産広告に掲載されている内容程度の簡易的なものであり、米国のMLSが持つ物件の情報量とは比べ物になりません。
米国のMLSにおいても、当初は不動産に関するデータソースやデータフォーマットは国内で統一されておらず、データを集約することは非常に困難を極めました。しかし、地道なシステム構築の努力により今日のMLSを確立することができているのです。
「時間をかけて地道にシステム構築をしていく」ことしか日本版MLSの実現の道はありませんが、可能性は大いに期待できるでしょう。