前回は、ギリシャの「投資移民政策」活用のメリットについて解説しました。今回は、ギリシャが抱える債務問題が不動産投資にどのように影響しているかを見ていきます。

先進国初の「返済延滞国」に認定されたギリシャだが・・・

財政赤字の隠蔽、IMFやECB(ヨーロッパ中央銀行)からの借り入れ、先進国初の「返済延滞国」認定、IMFへ15億ユーロ、ECB(ヨーロッパ中央銀行)への35億ユーロの返済不能から事実上のデフォルト状態まで追い込まれたギリシャ。

 

ギリシャのデフォルト、EU脱退を恐れたIMF、ECB、および欧州委員会の「トロイカ」からのつなぎ支援で急場をしのいでいる状況です。つなぎ支援からの債務返済という自転車操業に加え、第三次金融支援が2018年の夏に期限を迎え終了するという現在進行形の問題を抱えています。


緊縮財政を実施すれば、デモやストライキが発生。ギリシャ人と関わる多くの人から聞こえてくる「ギリシャ人はこの期に及んでも働かない」という声など、不安要素は山積みですが、そのような国の不動産に投資しても大丈夫という根拠はどこにあるのでしょうか。

2017年4月、連続13日間にも及ぶ「株価上昇」を記録

ギリシャ銀行(中央銀行)によると、2017年の経済成長率は2.5%でした。投資や消費、輸出が寄与し、16年の0.1%成長と比較して大幅の加速です。


また、一時期50%にも及んだ失業率は、2018年には20%まで低下すると予測されています。

 

2017年4月から5月にかけて、株価が連続13日間上昇し、26年間で最も長いサイクルとなりました。年間では、約27%の上昇を記録しました。

 

2017年7月には、3年ぶりに国債が発行され、7月21日には格付会社スタンダード&プアーズ(S&P)社がギリシャ格付の見通しをこれまでの「安定的」から格上げの可能性がある「ポジティブ」に引き上げるなど、債務危機からの再建へ環境が整いつつあります。

 

また、EUやIMFの支援の条件として国営会社や国有資産の売却を迫られ、事実上、中国の海運最大手「中国遠洋海運集団(コスコ)」が、ギリシャ最大の港であるピレウス港の運営を担っています。中国の「シルクロード経済圏構想(一帯一路)」から流れ込むチャイナマネーも、ギリシャ経済の回復に一役買っています。

 

2017年初頭より、ギリシャで銀行から引き出せる現金の金額が、わずか2週間で、840ユーロから1,600ユーロまで引き上げられました。2018年春には、2,800ユーロにまで上がり、その倍増振りがギリシャ経済の回復を物語っています。

 

さらに、2018年現在、ギリシャ国債を持っているのはほとんどがIMFなど公的な機関で、特定の外国や外国企業が多くを所有していた頃とは様相が全く異なります。今回のIMFへの不払いが金融市場に直接与える影響は限定的であろう、と現地メディアは伝えていました。

経済は、ポルトガルやスペインの後を追うように回復

下記図表1のグラフを見比べてください。右側は、本連載の第1回で掲載した、2000年以降のギリシャのGDPの推移です。そして左側は、ソブリン危機後IMFの支援を受け、全額返済した後に回復を続けているポルトガルです。ちょうど4年遅れで、ギリシャがそれに続いています。

 

[図表1]2ヵ国のGDFの変遷の比較

 

下記図表2からも分かるように、不動産価格もポルトガルの2年遅れで、プラス成長に転じています。

 

[図表2]ポルトガル、ギリシャの不動産価格の変遷

 

失業率でも2年遅れで、同様にソブリン危機後IMFの支援を受けた、スペインの後を追っています(下記図表3参照)。

 

[図表3]スペインとギリシャの失業率の変遷の比較

 

このような諸要素をどうお考えになるでしょうか?

 

次回は、いよいよ本連載最終回です。

本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は著者の個人的な見解を示したものであり、著者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、著者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

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