長年続くGDPの「喧嘩」現象
2018年1月、内蒙古、天津が相次いで、経済統計に水増しがあったことを明らかにした。内蒙古は16年の財政収入の26.3%と総工業生産の40%にあたる各々530億元、2900億元、天津はその濱海新区の16年公表GDP1兆元強の30%以上が水増しだったとした。さらに、中央政府が発表した17年経済実績や全人代での説明ぶりにも疑問が出されている。
中国では以前から、中央政府が発表する全国GDPと各地方政府が発表する地方GDP合計に大きなかい離があり、「数据打架(ダージア)」、つまり「数字が喧嘩する」現象と呼ばれてきた。地域をまたがる経済活動が重複計上されるという技術的要因があるが、それだけではなく、地方政府による「注水」と呼ばれる水増しが指摘されてきた。近年かい離は縮小傾向だが、なお17年3兆元、約4600億ドルで、ほぼタイのGDP規模に匹敵する。
17年1月、遼寧省長が地方全人代で2011〜14年財政収入に水増しがあったことを認めたことと合わせ、中国内で「自曝家醜」、つまり「自ら身内の恥をさらし」、これを「挤水(ジーシュイ)」、水を絞り出す(是正する)動きが顕著で、18年初、多くの地元紙にこれを揶揄する風刺画が出回った(図表1)。
[図表1]地方GDP水増しを揶揄する中国地元誌
最新実績では、地方GDP合計額が全国GDPとほぼ一致
なお天津は企業の生産計上を登記ベースから実際の生産拠点ベースにしたためとしており、必ずしも意図的な水増しとは言っていない。また、問題のあった計数は天津市GDP統計には含まれていないとして、市のGDPは変更していないが、17年と18年第一四半期の成長率は大きく低下している。遼寧、内蒙古、天津の他、審計署(日本の会計検査院にあたる)は17年、雲南、湖南、吉林、重慶管轄の10市県で総額15.49億元の財政収入水増し、また党中央紀律委も巡視結果として吉林の統計水増しを指摘している。
こうした中で、18年4月から5月にかけて、各省市区で相次いで発表された18年第一四半期実績では、地方GDP合計額が全国GDPとほぼ一致する一方、各地方のGDPで加重平均した成長率は公表全国成長率6.8%をやや上回る7.02%となっている(図表2、3)。
[図表2]全国GDPと地方GDPのかい離
[図表3]省市区別成長率