▲トップへ戻る
中国「経済統計」の水増し、矛盾の実態とは?

中国の「経済統計」については、以前から、中央政府が発表する「全国GDP」と各地方政府が発表する「地方GDP合計」に大きなかい離があると指摘されてきた。2018年1月には、内蒙古、天津が相次いで、経済統計に水増しがあったことを明らかにしている。本連載では、中国の経済統計でこうした水増しや矛盾が起こる背景を探っていく。

長年続くGDPの「喧嘩」現象

2018年1月、内蒙古、天津が相次いで、経済統計に水増しがあったことを明らかにした。内蒙古は16年の財政収入の26.3%と総工業生産の40%にあたる各々530億元、2900億元、天津はその濱海新区の16年公表GDP1兆元強の30%以上が水増しだったとした。さらに、中央政府が発表した17年経済実績や全人代での説明ぶりにも疑問が出されている。

 

中国では以前から、中央政府が発表する全国GDPと各地方政府が発表する地方GDP合計に大きなかい離があり、「数据打架(ダージア)」、つまり「数字が喧嘩する」現象と呼ばれてきた。地域をまたがる経済活動が重複計上されるという技術的要因があるが、それだけではなく、地方政府による「注水」と呼ばれる水増しが指摘されてきた。近年かい離は縮小傾向だが、なお17年3兆元、約4600億ドルで、ほぼタイのGDP規模に匹敵する。

 

17年1月、遼寧省長が地方全人代で2011〜14年財政収入に水増しがあったことを認めたことと合わせ、中国内で「自曝家醜」、つまり「自ら身内の恥をさらし」、これを「挤水(ジーシュイ)」、水を絞り出す(是正する)動きが顕著で、18年初、多くの地元紙にこれを揶揄する風刺画が出回った(図表1)。

 

[図表1]地方GDP水増しを揶揄する中国地元誌

(注)「数字出官」は「数字が役人を出世させる」、「数据造假」は「数字ねつ造」、「其些」は「どこかの」
(出所)2018年1月11日付北京青年報
(注)「数字出官」は「数字が役人を出世させる」、「数据造假」は「数字ねつ造」、「其些」は「どこかの」 (出所)2018年1月11日付北京青年報
「经济增长」は「経済成長」
(出所)2018年1月17日付騰訊絧
「经济增长」は「経済成長」 (出所)2018年1月17日付騰訊絧
2018年1月15日付中国青年絧
2018年1月15日付中国青年絧
2018年1月14日付南方都市報
2018年1月14日付南方都市報

最新実績では、地方GDP合計額が全国GDPとほぼ一致

なお天津は企業の生産計上を登記ベースから実際の生産拠点ベースにしたためとしており、必ずしも意図的な水増しとは言っていない。また、問題のあった計数は天津市GDP統計には含まれていないとして、市のGDPは変更していないが、17年と18年第一四半期の成長率は大きく低下している。遼寧、内蒙古、天津の他、審計署(日本の会計検査院にあたる)は17年、雲南、湖南、吉林、重慶管轄の10市県で総額15.49億元の財政収入水増し、また党中央紀律委も巡視結果として吉林の統計水増しを指摘している。

 

こうした中で、18年4月から5月にかけて、各省市区で相次いで発表された18年第一四半期実績では、地方GDP合計額が全国GDPとほぼ一致する一方、各地方のGDPで加重平均した成長率は公表全国成長率6.8%をやや上回る7.02%となっている(図表2、3)。

 

[図表2]全国GDPと地方GDPのかい離

(出所)中国国家統計局、地元各誌より筆者作成

[図表3]省市区別成長率

(出所)中国各誌報道より作成

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) 独立取締役

1976年、大蔵省入省。1990年、アジア開発銀行理事代理、2000年、香港理工大学中国商業センター客員研究員。2003年、アジア開発銀行研究所総務部長、2006年以降、財務省神戸税関長、財務省財務総合政策研究所次長、財務省大臣官房政策評価審議官、2010年から大和総研常務理事等の要職を歴任。 2015年、NWB(日本ウェルス)の独立取締役に就任。一橋大学卒。香港中文大学普通話課程修了。
WEBサイト https://jp.www.nipponwealth.com/

著者紹介

連載中国「経済統計」の信頼性を探る~統計水増し、矛盾の背景は何か?

 

 

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧