経済合理性で見れば清算より断然M&Aがおトク
なぜ安易な清算を勧めないのか? それは経済合理性で考えれば一目瞭然だからです。会社を清算する場合、その会社の価格は、清算時点での「処分価額」でしかありません。
仮に決算書上では10億円の資産がある会社でも、実際にはほとんど資産価値がなかったというケースは意外に多いといえます。
例えば原材料や半製品などの在庫は、二束三文で処分されることさえあります。一方、M&Aの場合は事業を続ける前提のため、同様の資産や不動産も「事業に必要な資産」として大きく毀損しないですむことがあるのです。
将来の利益も価格に反映される
M&Aでは将来的に生み出す利益の一部を、「のれん代」として資産価値に上乗せすることが通常です。
仮に年間に7000万円程度の利益を安定して計上していた場合、例えば「7000万円×3年分=2億1000万円」がプレミアム価格として上乗せされることがあるわけです。
一方の廃業・清算では、このようなのれん代を上乗せすることは一切ありません。その上、会社を廃業・清算する場合、予想より多くの出費が生じる場合もあります。従業員への退職金や、取引先と長期の仕入れや販売契約を結んでいた場合、違約金などが発生する可能性もあるかもしれません。
M&Aでは条件次第とはいえ、従業員は今まで通りに勤務し、仮にリストラや異動がある場合も、譲渡後の新体制で行われることが一般的です。つまり、元のオーナー社長が事前に対応しておく必要は、基本的にはありません。
さらに、清算では、基本的に資産を処分して得た現金で借入金などの負債を返済しますが、多くの場合、すべての資産を処分しても負債や個人保証が残ってしまいます。
一方、株式譲渡によるM&Aでは、会社の負債は新しい体制に引き継がれ、個人保証なども解除されるのが通常です。