前回は、金融機関の言う通りに資産運用しても「お金が増えない」理由を紹介しました。今回は、営業マンが熱心に勧める「外貨建て商品」に、なぜ注意が必要なのかを見ていきます。

効率的な資産形成に「国際分散投資」は不可欠だが・・・

銀行や証券会社、保険会社など金融機関の営業マンは、どこも資産分散の必要性を訴えて外貨建て商品の利用をお勧めしてきます。具体的には、外貨預金や外国債券、外貨建て投資信託、外貨建て保険などです。

 

しかし、効率的に資産を増やしていきたい投資家にとってこれらの外貨建て商品は必要ありません。

 

人口減少社会の到来や高齢化の進行、財政状況の悪化やグローバルな経済取引の進展を背景に、個人が国内資産だけでなく海外資産を保有する必要性が高まっていることは誰もが認めるところです。私も資産運用アドバイザーとして国際分散投資をお勧めしています。大切な資産の価値を守り、増やしていくためにも海外への投資は不可欠です。

 

営業マンもこのような理由から海外資産を保有する必要性を訴え、様々な外貨建て商品への投資を提案してきます。

 

特に、最近は外貨建て保険の提案に力を入れているようです。国内金利の低下の影響もあり、日本円建てでは魅力的な商品が組成できず、必ずと言っていいほど外貨建て保険商品を提案してきます。

 

営業マンの立場からすると、外貨建て商品は円建ての商品に比べて利回りが高く見えるため、金融に詳しくない一般の利用者には販売しやすく、また、商品に含まれる手数料も大きいので、収益拡大にもつながります。したがって、熱心な営業活動を展開しています。

あえて「コストの高い外貨建て商品」を選ぶ必要はない

しかし、投資家の立場からすれば、できるだけ低コストで資産の分散をできた方が良いはずです。そのためには、コストの高い外貨建ての商品を利用しなくても、他にもっと有利な方法があります。

 

例えば、円建てで海外資産に投資するインデックス・ファンドやETF(上場投資信託)を使えば、為替手数料の負担もほぼありませんし、運用コストもかなり低く抑えられます。仮に将来的に円安が進めば、円建ての運用であっても投資した商品の価格自体がその分上昇するため、外貨建ての商品を利用しなくても同じ運用成果が得られます。

 

営業マンはこのような投資提案をしてくれません。なぜならば、手数料収入がほとんど稼げないからです。

 

しかし、ある程度の金融リテラシーを備えた人は必ず利用している方法です。

 

英国や米国のように金融商品の販売手数料ではなくアドバイスに対する報酬で生計を立てる独立系の資産運用アドバイザーがお勧めしているのも、こういったインデックス・ファンドやETFを利用した投資です。

 

将来は海外に移住する予定があるような一部の人を除けば、外貨で資金を使うケースはほとんどないわけで、それだったら円建ての運用商品を使って国際分散投資に取り組めば、効率的に海外資産への投資からリターンを得ることができます。

 

唯一例外的に、外貨建ての運用商品の中でも利用する価値があるのは海外ETF(上場投資信託)です。外国の金融機関を利用しなくても、多くの国内証券会社を通じて誰でも取引ができます。0.1%単位まで徹底的な運用コストの削減にこだわる場合や、米国市場の多様な商品ラインナップから商品を選びたいと考える投資家にとっては、魅力的な選択肢になります。

 

ただし、金融機関にとって海外ETFへの投資から手数料はほとんど得られないので、営業マンは積極的には提案してくれません。海外ETFを利用した投資に取り組みたければ、投資家自身が情報収集に取り組むか、独立した立場の外部のアドバイザーを利用する必要があります。

 

効率的に資産を増やしたい投資家にとって、海外資産に投資する必要はありますが、外貨建ての運用商品を利用する必要はありません。

本連載は、特定の金融商品の推奨や投資勧誘を意図するものではありません。また、投資にはリスクがあります。投資はリスクを十分に考慮し、読者の判断で行ってください。なお、執筆者、製作者、幻冬舎グループは、本連載の情報によって生じた一切の損害の責任を負いません。

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