近年、世界の運用マーケットで急速な拡大を見せる「ESG投資」。ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に対して、企業がどのような取り組みを実施しているかを調査・分析し、投資の基準とする手法のことです。今回は、欧州におけるESG投資への取り組みと、日本の機関投資家の現状を見ていきます。

欧州では90年代より、ESG投資への取り組みが本格化

2006年国際連合が提唱した「責任投資原則(PRI)」で注目されたESG投資ですが、欧州では1990年代より取り組みが本格化しており、「責任投資原則(PRI)」への取り組みも、英国、オランダ、フランス等、欧州諸国が先行する形で発展してきました。

 

 

[図表]国別PRI署名機関数(運用機関)

(2017年3月31日現在)
出所:PRI
(2017年3月31日現在)
出所:PRI
 

2017年3月末時点では世界全体で約1700機関が上記原則に署名しており、その運用資産総額は62兆ドル(約6600兆円)もの規模に拡大しています。

日本ではGPIFの取り組みにも期待

コムジェストの発祥の地、フランスでは2000年代前半、年金財政の悪化に伴い公的年金を賦課方式から積立方式に変更しましたが、その際、強い影響力を持つ労働組合の申し出により、「責任投資」を行うことを条件としてこの変更が認められました。

 

 

結果として、2004年に運用を開始した公務員退職年金基金(ERAFP)、同2005年のフランス年金準備基金(FRR)は、ともに基金運用の開始からESG投資に取り組む形となりました。

 

特に、公務員退職年金基金はそのSRIチャーターにて、運用資金を全額SRI投資に振り向け、年金資金の運用を通して、社会、環境、経済に対する責任を果たすことを宣言しています。

 

一方、日本の機関投資家の署名数は30と少なく、投資残高のグローバルシェアでは2%強(2016年)とその取り組みの遅さが指摘されています。2015年9月に世界最大の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がPRIの署名機関となり、今後の日本の機関投資家における普及、促進が期待されています。

 

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