今回は、「1,000万円以下」の小規模なM&Aを円滑に進める方法を見ていきます。※本連載では、事業承継の選択肢のひとつとして、M&Aの基礎知識を紹介します。

手間や時間、お金がかかると本末転倒に・・・

中小企業の経営者にとって「後継者問題」はかなり深刻な問題となっています。後継者不足が原因で年間約7万社が廃業し、約30万人分の雇用が失われていると言われているほどです。しかし、会社の経営を任せられる人が身近にいることは多くはなく、適切な後継者を自力で探すのはとても困難です。

 

そこでM&Aを行うことで事業継承問題を解決しつつ、企業の発展、創業者の利潤確保も同時に実現させることができます。今回は1,000万円以下クラスの超小規模な案件に絞って、M&Aの方法を紹介していきます。

 

まずは実際に事業譲渡・売却を行う際の流れを確認しましょう。大まかな流れは、

 

(ⅰ)仲介業者・アドバイザーを利用する場合は依頼する

(ⅱ)売却/譲渡先を見つける

(ⅲ)基本合意書の締結

(ⅳ)デューデリジェンスの実行

(ⅴ)最終条件交渉・取引の実行

 

のようになります。(ⅱ)で売却/譲渡先を見つけることができなければ何も始まらないので、この段階が超小規模M&Aでは最も困難である場合が多いです。(ⅳ)のデューデリジェンスとは直訳すると「行うべき努力」となり、M&Aを行う際に投資対象を詳細に調査することを意味します。最終的には(ⅴ)の段階まで行ってM&Aが完了するのですが、仲介業者・アドバイザーを利用しない場合、これらすべてを経営者自らが行うのは非常に大変です。超小規模の場合は特に時間や資金をあまり使いたくないのでスムーズに行いたいものです。

 

超小規模M&Aと大規模なM&Aではどのような違いがあるのでしょうか。一番大きな違いと考えられるのがM&Aの方法・目的ではないでしょうか。大規模の企業は市場の拡大や競争力の増加を主な目的に吸収合併をすることが多いですが、小規模の企業は後継者不足の解決や資金を得ることを主な目的として事業譲渡・株式譲渡を選択することが多いです。

 

小規模企業は資金力があまりない分、M&Aを行う際に手間や時間、お金がかかってしまうと本末転倒となってしまいます。つまり、スムーズにかつお金をあまりかけずにM&Aを行う必要性がとても強いと言えます。そこで、超小規模M&Aを手間なく行う具体的な方法を紹介していきます。

マッチングサイトなど利用すれば、速く手軽に売却可能

1,000万円以下クラスの超小規模案件の場合、仲介業者やM&Aアドバイザーに依頼すると、着手金や成功報酬などで売却金額の大半が消える可能性があります。特に成功報酬に関しては最低報酬金額を設定している業者が多く、それが数百万円単位であったら売却額が手元に残らないことがあります。では超小規模案件の場合はどうすればよいのでしょうか。二つ例を挙げて紹介します。

 

①民間企業が運営しているマッチングサイトを利用する

 

まず一つ目に有効な手段として挙げられるのがインターネット上のマッチングサイトを利用することです。仲介業者やM&Aアドバイザーを利用するのと比べて速く手軽に利用することができ、手間がほとんどかからない点が最大の特長です。今回の記事では数多くあるマッチングサイトの中から二つを絞って紹介していきます。

 

★TRANBI

国内最大級のM&Aマーケットの一つとして「TRANBI(トランビ)」があります。こちらのサイトではユーザー数は5,300人、累計マッチング数は2,800件を超えており、業種と地域で検索をかけることで自分で企業を探すことも、自社を登録することもできます。このサイトでは自社を登録することで買い手から直接連絡が届き、さらに売り手は利用料が無料なので超小規模M&A案件にも向いていると言えます。ただ、色々な買い手が見ているため、情報の流出リスクは非常に高いことと悪質な買い手等も中にはいるので、細心の注意が必要です。

 

★&Biz

二つ目に紹介するマッチングサイトは「&Biz」です。こちらのサイトも累計成約数が1,800件を超えており国内最大級のM&Aマーケットといえます。TRANBI同様に登録費用、情報閲覧、売り手の手数料などは無料です。&Biz最大の特徴はアドバイザーが無料で売り手と買い手の仲介をしてくれる点と、選択制で非公開マッチングを選ぶことができる点です。公認アドバイザーが交渉をサポートしてくれるのでスムーズに進行させることができ、高い成約率を実現しています。非公開マッチングとは&Bizと提携している、本来市場には出回らない優良買い手を紹介してくれるサービスです。公開マッチングと比べて約10倍の成約率を誇るとされています。質と信頼性を特に重視される方におすすめですが、こちらのサービスは有料なので注意が必要です。

 

②経済産業省が運営している事業引継ぎ支援センターを利用する

 

二つ目に有効な手段として挙げられるのが「事業引継ぎ支援センター」を利用することです。平成26年1月20日に、企業単位での規制改革や事業再編、企業の促進による産業競争力の強化を目的とした「産業競争力強化法」が施行されました。この一環として各都道府県に事業引継ぎ支援センターが設置され、事業引継ぎに関する相談をしたり、アドバイスを受けたりすることができます。アドバイザーや専門家の人件費は国費でまかなわれているため無料で相談でき、銀行・証券会社等でM&A業務に携わった経験豊富な方が多いので、困ったときに質の高いサポートを受けることができます。具体的な利用の流れを説明します。

 

●情報の収集/相談

まず、支援センターを訪れて継承先や継承法等の確認をします。M&Aはそれなりの期間を要するので、早めに全国の支援センターへ相談することをおすすめします。

 

●面談

面談では、事業継承に関する現状の状況把握を行い、課題や対処策を考えます。面談の結果、経営改善の必要性があると判断された場合や、事業継続が困難で廃業を視野に入れるべきと判断された場合はさらに適切な相談窓口や専門家の紹介も行ってもらえます。事業継承の意向を確認でき次第、次の段階へ進みます。このとき、自社の強み・弱みや課題等を経営者自らが把握していることがとても大切になってきます。

 

●データベース登録

面談の結果、譲り渡しの意思が確認できた案件について、支援センターが個人情報をデータベースに登録します。この情報は全国の事業引継ぎ支援センターに匿名で共有され、マッチングの可能性が認められた買い手との引き合わせの手続きまで行ってくれます。

 

以上が事業引継ぎ支援センターを利用する際の流れとなります。このように支援センターでは最初から最後まで丁寧にサポートしてくれます。マッチングサイトを利用した際と比べて多少時間はかかってしまうとは思いますが、自分一人で行うよりは非常にスムーズであると思われます。細かい部分に関しては各都道府県によって異なる可能性がありますので「都道府県名 事業引継ぎ支援センター」で検索して事前に調べておくと良いかもしれません。

 

いかがだったでしょうか。中小規模会社の経営者の高齢化が進む中、M&Aによる事業継承の必要性は年々高まってきています。1,000万円以下クラスのM&Aはなるべく費用を抑えて譲渡・売却したいものです。今回紹介した手段を用いることで極力費用をかけずに自社のM&Aを検討されてみてはいかがでしょうか。

本連載は、株式会社M&Aクラウドのサイト『M&A to Z』(https://media.macloud.jp)から転載したものです。

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