今回は、親族内承継、社内承継、M&Aの、3つの事業承継のメリットとデメリットを見ていきます。※本連載では、事業承継の選択肢のひとつとして、M&Aの基礎知識を紹介します。

承継方法として最も選ばれている「親族内承継」

事業承継のメリット・デメリット

事業承継には①親族内承継、②従業員などへの承継、③M&Aがあります。以前は親族内承継が9割を超えていましたが、近年は従業員やM&Aなどの第三者への承継が増えており、4割を超える結果となっています。

 

親族内承継とは

親族内承継とは、経営者の息子・娘・配偶者・甥・姪などの親族を後継者として事業承継させる場合です。近年減少しつつあるものの、最も選択されている事業承継方法です。

 

親族内承継3つのメリット

1.利害関係者の理解を得られやすい

一般的に企業を取り巻く利害関係者の心情的理解を得やすい傾向があります。なので、引き継ぎなどがスムーズに行えることが可能になります。

 

2.後継者選択時期の柔軟性

後継者の選定を早期に行いやすく、後継者教育などの事業承継の準備を十分に確保することが可能になります。

 

3.承継方法の選択の幅が広い

承継方法として、売買や贈与、相続制度の利用も選択することが可能になります。自分に合った税制制度を選択することができ、承継方法の幅を広げることができます。

 

親族内承継のデメリット

1.承継希望者がいない

親族内に、経営の資質と意欲を併せて持っている後継者候補の存在が必要です。

 

2.適格性判断が甘くなる

事業の継続には従業員やその家族など、多くの人の生活がかかっているので、後継者となる人の資質の見極めが重要となります。しかし、親族が後継者となる場合は資質の見極めが甘くなってしまい、事業承継後に会社の経営が悪くなってしまうことがあります。

 

3.相続紛争のリスク

後継者候補が複数人いる場合、現経営者についての相続時に相続紛争が生じる恐れがあります。相続紛争が生じてしまうと、銀行預金さえ相続人全員の合意がない限り動かせなくなる可能性があります。

後継者育成の時間が短縮できる「従業員承継」

社内への承継とは

 

従業員などへの承継とは、他の役員や従業員を後継者として事業を承継させる場合です。

 

従業員承継のメリット

 

1.関係者の理解を得られやすい

親族内承継同様、利害関係者からの心情的理解を得やすい傾向があります。

 

2.適格性判断のしやすさ

現経営者は後継者候補の従業員の能力について十分に理解しているので、資質の見極めにかかる時間とコストを減らすことが可能になります。

 

3.後継者教育の時間短縮

従業員であれば業務内容に精通しているので、後継者教育の時間を大幅に短縮することが可能になります。

 

従業員承継のデメリット

1.後継者の資金不足

現経営者から株式を買い取らなければならないため、十分な資金力が必要となります。

 

2.個人債務保証の引き継ぎ

現経営者が事業資金を金融機関から借入する際に個人で連帯保証人となっている場合、後継者も同様の連帯保証人とならなければならない可能性があります。

後継者がいなくても事業継続が可能な「M&A」

M&Aによる事業承継とは

M&A(企業の合併、買収)は同業者、取引先、その他の人に事業を承継させる場合です。

 

M&Aの事業承継のメリット

 

1.事業継続が可能

身近に適当な後継者がいない場合でも事業の継続が可能となります。

 

2.事業強化

買収先が持つブランド力やノウハウ、シナジー効果よって業績が伸びる可能性があります。

 

3.会社売却時の利益獲得

現経営者は会社売却時に株式売却代金を得ることができるので、リタイア後にゆとりある生活を送ることができる可能性があります。

 

M&Aによる事業承継のデメリット

1.買い手が見つからない

ひとりの力では希望条件(従業員の雇用、売却価格等)を満たす買い手を見つけることが困難になります。

 

2.情報漏れによる影響

会社売却を検討していることが取引先や金融機関に情報漏れしてしまうと、取引停止や融資のストップなどが起きてしまう可能性があります。

本連載は、株式会社M&Aクラウドのサイト『M&A to Z』(https://media.macloud.jp)から転載したものです。

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