前回は、M&Aの売り手として「IT系の人材紹介会社」の人気が高い理由を紹介しました。今回は、盛り上がりを見せる「婚活事業」のM&A成功事例を見ていきます。

市場の盛り上がりと収益性の高さから、大手企業も注目

前回は、IT系の人材紹介会社が、なぜ高値でM&Aできるのかについて事例を用いながら説明をしました。今回は、昨今のM&A市場で大きく盛り上がっている「婚活事業」について見ていきます。

 

20〜50歳までの独身者人口が2000万人おり、初婚年齢が上がり続けている現代、婚活を行う方は増加しています。婚活ビジネスには、少子高齢化対策と地域活性化という2つの課題を解決する可能性があり、婚活支援を行う自治体や地方公共団体が増加しています。

 

婚活関連サービスには、結婚相談所、街コン、マッチングアプリ、相席屋といったビジネスがありますが、婚活関連サービスを行う上場企業の収益性は非常に高くなっています。

 

結婚相談所を運営するIBJは、2016年12月期に売上高51億円で営業利益が11億円、同じく結婚相談所を運営するパートナーエージェントは売上高36億円で営業利益が4.4億円、ツヴァイが売上高38億円で営業利益が1.5億円、街コン大手のリンクバルが売上高21億円で営業利益が2.9億円となっています。

 

IPOと同様にM&Aも増加しています。500万人のユーザーを抱えるマッチングアプリ「pairs」を運営するエウレカは、2015年に米国のInter Active Corp(IAC)にM&Aで売却をしました。また2018年の1月には「相席屋」を運営する株式会社セクションエイトが、日本の投資ファンドであるJ-StarにM&Aをしています。

 

このような市場の盛り上がりと収益性の高さから、大手企業も婚活関連の事業への投資に積極的です。サイバーエージェントのIR資料によると、現在5つのマッチングサービスを手掛けており、ミクシィも子会社のDiverse社にてマッチングアプリを提供しています。

ベンチャー企業が大きく成長するには課題が山積

東京で婚活事業を運営するI社は、創業4年目のベンチャー企業です。婚活のイベントを企画・運営する事業を展開しており、売上高は1.2億円、正常収益力で2,000万円の企業です。1都3県の婚活希望男女をインターネット広告と大手が公開している会員情報を元に、イベントの参加料金で売上を上げるビジネスモデルで急成長を遂げてきました。

 

しかしイベント開催には、広告費やイベント運営に関わる人材、場所代や婚活の相談、コストや人手がかかります。収益性は高いものの、ベンチャー企業が大きく成長を遂げていくには、課題が山積していました。

 

大手企業から第三者割当増資を受けて資金力を増強しましたが、なかなか人材採用の部分が上手くいかず、面談に来てくれる方はやる気はあるものの業界未経験だったり、イベント会場を盛り上げる力が足りなかったりと、ベストな人材には出会えませんでした。

 

そこで事業成長とサービス拡大のために、中堅〜大手企業の傘下に入ることを検討しました。

 

筆者はイベント運営と人材採用力に力がある広告代理店・不動産会社・人材会社をターゲットに、M&Aを打診し始めました。東京都内には広告代理店も不動産会社も人材会社も多数あり、彼らの中には新しい新規事業を求めている企業も多かったため、新規事業としてイベント、特に婚活事業へ参入したい会社をピックアップしました。

 

検討に手を上げた企業は6社あり、その中でも高値でオファーを出した3社とトップ面談をしました。最終的には、都内で売上高20億円の広告代理店O社にM&Aを実行しました。

 

O社はイベント企画が得意な企業であり、有名なフードフェスティバルや企業のビジネスマッチングイベントなど、多数のイベント開催実績があります。彼らの実績を活用し、今までにないイベントの企画やプロデューサー人材を投入し、事業成長を図ることが可能となりました。

 

I社は、M&A初年度となる2017年に売上成長率15%を誇ることが出来ました。今後も人材交流を含めて、さらに事業成長を図ることとなっています。

 

次回は、これまで見てきた事業会社へのM&Aではなく、投資ファンドにM&Aを実行し、どのように成長させていくかについて見ていきます。

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