今回は、納税資金のために仮想通貨を「現金化」する際のポイントを見ていきます。※本連載では、税理士・西浦雅人氏が、仮想通貨にまつわる税金について分かりやすく解説します。

手元現金が非常に少ない「仮想通貨長者」たち

前回の続きです。

 

数百倍になった仮想通貨を使ってX円分の出資をする場合、多額の現金を保有しないといけないわけです。ですが、仮想通貨長者の財産のほとんどは、仮想通貨です。手元現金が非常に少ないです。

 

ICOへ入れるときには、現金化するものと、ICOへ入れるBTC等がいるわけです。どれくらいの割合で現金化すれば良いのでしょう?

 

今回は、数百倍になっている前提として計算をするので、取得価額を0として考えてみます。最高税率は55%(所得税+住民税)ですが、他に所得があったり、生活費で使う部分もあると思いますので、60%で計算してみます。

 

X円を出資する場合に、発生する税額は「X×60%=0.6X」です。

 

しかし、手元にお金が無いので、0.6X分の仮想通貨を売って、0.6Xを現金化すると「0.6X×0.6=0.36X」の税額がかかってしまうので、本当に手元に残る現金は「0.6X-0.36X=0.24X」となってしまいます。

 

ということは、現金化した金額のうち、60%の税額を引かれた後に、0.6Xになれば良いので、「0.6X÷(1-0.6)=1.5X」は現金化すれば良いということですね。

 

つまり、出資額の1.5倍は現金化する!

 

1億円を出資した場合は、60%分の6,000万円の税金を払う必要があります。1億5,000万を現金化すると、「1億5,000万×60%=9,000万円」の税金がかかるので、1億5,000万から9,000万を引かれた6,000万円が手元に残ります。この手元に残る現金6,000万円で1億のICO出資分の6,000万円を支払うことができます。

 

2億円分持っている時は、2.5分の1までしか入れない方が良いっていうことですね。つまり、「2億÷2.5=8,000万円」までなら入れても大丈夫ということです。

納税時の通貨価格がプレセール時よりも低い場合は?

一番まずいパターンとしては、持っている通貨を売って、納税をしようと思ったときに、プレセール時の通貨の金額から、納税資金準備の時の通貨価額が落ちている場合ですね。

 

しかし、2017年12月までにICO案件に入れて、納税のために2018年3月に現金化すれば、現金化したものについては、2019年3月に確定申告するので、多少キャッシュの余裕が出るかと思います。納税資金の注意はしておいたほうが良いでしょう。

 

そもそも、雑所得となり総合課税で累進課税が適用されると、日本では結構つらいですね。破産者が続出しそうな気がします。税金で55%程消えてしまいますから。今回は、生活費等も加味して、税率をそれ以上の60%で計算しておきましたので、思ったより税金が高かったということは無いと思います。

 

これほどまでにボラティリティ―の高い取引においては、申告分離課税で20%を適用しないと破産者が続出しそうな気がします。国税庁もそこに気づいてくれないと、日本から離れるために非居住者になろうとする人が増えるでしょうね。各国において取扱いが異なりますので、いろいろと勉強する必要があると思います。

 

一番避けないといけないのは、匿名性の高い通貨に入れて海外ウォレットへ飛ばし、わからないようにするという手段でしょうか。これは完全に脱税ですので、やめてほしいところです。税金についても、知識を持って取引をしていただきたいところですね。

 

2017年12月1日、国税庁が「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」を発表しました。目次は下記の通りです。ネットで調べると、PDFファイルのものが検索できると思います。

 

1.仮想通貨の売却

2.仮想通貨での商品の購入

3.仮想通貨と仮想通貨の交換

4.仮想通貨の取得価額

5.仮想通貨の分裂(分岐)

6.仮想通貨に関する所得区分

7.損失の取扱い

8.仮想通貨の証拠金取引

9.仮想通貨のマイニング等

 

No.1524 ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係[平成29年4月1日現在法令等]

 

ビットコインは、物品の購入等に使用できるものですが、このビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となります。このビットコインを使用することにより生じる損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分されます。

 

(所法27、35、36)

本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は著者の個人的な見解を示したものであり、著者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、著者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

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