医療機器の選定や不動産取引、人事労務といった多くの専門的問題を1人で解決し、開業準備を進めるのは困難です。今回は、開業準備で重要な外部ブレーンの選び方を見ていきます。

開業準備にあたって外部ブレーンが必要となる理由

前回は開業のスケジュールについて説明しました。ここからは、スケジュールの順序に沿って、より詳しくポイントを解説していきましょう。まず、なるべく早めに着手したいのが、外部ブレーンとコンタクトをとることです。開業準備をすべて自力でこなすことは、時間のない勤務医の方にはまず無理です。

 

時間があったとしても、たとえば1人で物件を探すのは難しいですし、完璧な事業計画書を作成するのも困難です。ほかにも、医療機器の選定や不動産取引、人事労務といった多くの専門的問題を解決していかなければならないため、それぞれの分野において豊富な知識とノウハウを持つ外部ブレーンを見つけ、タッグを組むことが必要になってきます。外部ブレーンもさまざまですが、おおむね以下の図に挙げたような専門家を頼るのが一般的です。

 

 

このうち、各分野の専門家の紹介も含め、トータルで頼りになるのが、歯科材料・歯科医療機器・歯科医薬品を取り扱っている会社(以下、材料会社)です。材料会社にとって、これから開業する先生は、将来のお客さまなので、多くの材料会社が開業支援事業を手がけています。ゼロの状態で声をかければ、物件探しから手厚いバックアップを受けることができるでしょう。

 

彼らは歯科医院開業にとっての必要条件を熟知しているため、立地のよい物件や、歯科のほか内科、皮膚科、小児科など、さまざまな病院が入っている医療モール内のテナントなど、個人ではとても見つけられないような好条件の物件を探す力を持っています。もちろん、開業準備中や開業後に、医療機器や歯科材料を購入するのもスムーズです。

 

ただし、開業地と離れた場所にある会社に依頼すると、たとえば機材が故障したときのメンテナンス一つ頼むのにも時間がかかることになります。なるべく近隣の会社を探したほうがよいでしょう。

真に中立的な立場からアドバイスを受けられるか?

同じようなイメージで、住宅メーカーの中にも、開業支援を手がけているところがあります。特に戸建て開業の場合などは、開業支援担当者がいるので、検討してみてもよいかもしれません。ただし、そのハウスメーカーで建築するという条件付きになります。

 

なお、材料会社は、あくまで自分たちのビジネスのために支援している、いわば「ひも付き」の支援であることを忘れてはいけません。商品をなるべく多く売りたいという、強固な意志が根底にあります。また、診療所を建てる住宅メーカーも、なるべくお金をかけて建設してもらいたいと考えているのは事実です。そのことを念頭に置いて協力を求めることになります。

 

したがって、歯科専門税理士や歯科医療コンサルタントなど、ニュートラルな立場でアドバイスしてくれる専門家を味方につけるのがおすすめです。

 

たとえば、歯科専門の税理士は、開業全般のノウハウを持っていますが、とりわけお金の問題に強いというメリットがあります。筆者も、材料会社に開業支援を受けている先生とよくお話ししますが、お金の専門家として指摘させてもらうことが多いのが、予算の削減です。いいかえれば、「返済可能な歯科医院経営が成り立つための適正借入額の検証」です。

 

材料会社に事業計画書を作成してもらいますが、往々にして高価な(必ずしも必須ではない)機材の購入が、計画の中に含まれています。開業に燃えている先生は「最新鋭の医療機器」を希望されることが多く、開業予算が高くなってしまうのです。

 

気持ちはわかりますが、それでは借金が膨れ上がってしまうため、先生と相談しながら、その金額を医院経営に支障がない金額に抑えるようアドバイスするのも、お金の専門家の仕事です。開業後も、毎年の税務申告などで税理士とは付き合っていくことになるため、ひも付きではない立場の人に相談するのがベターです。日本政策金融公庫など、融資を依頼する金融機関を紹介してもらうことも可能です。税理士からの紹介状があると、公庫の融資は比較的スムーズに通ります。

 

ただし、税理士にも専門分野があるので、歯科の開業支援をしたことのない税理士だと、歯科医院特有の視点でのチェックが甘くなり、事業計画書を持ち込んでも的確なアドバイスが見込めません。

 

材料会社、税理士などのほか、有力な外部ブレーン候補として挙げられるのが歯科医療コンサルタントです。歯科医療コンサルタントも、開業を目指す歯科医をサポートする専門家で、もちろん開業ノウハウに精通している心強い存在といっていいでしょう。インターネットで「歯科医療コンサルタント」を検索すると、たくさんのコンサルタント会社が見つかるはずです。

 

また、一部には実績の少ないコンサルタントもいるので、コンサルタント選びには注意が必要です。大切なのは、実績の有無や料金体系、サポート内容などをはっきりさせたうえで、良心的なコンサルタントを選ぶことです。

 

特に料金面では、コンサルタント料がかなり高額に及ぶ場合もあります。物件探し、診療圏調査、事業計画書作成、機材購入は材料会社の開業支援担当に依頼し、事業計画書のチェックと金融機関の紹介という資金面、税務面の相談は歯科専門税理士に依頼するのがおすすめです。相談料も一番安くなりますし、無料の場合もあります。

本連載は、2014年3月20日刊行の書籍『一生稼げる歯科医院開業読本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

一生稼げる歯科医院開業読本

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松本 泰世

幻冬舎メディアコンサルティング

歯科医師とほかの診療科の医師との大きな違いは、近い将来いずれは独立開業を迫られることになるという点です。開業準備は早ければ早い方が有利になります。しかし、具体的に何から手を付ければよいのかが分からずに開業準備を…

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