毎年12月半ばに与党により発表される「税制改正大綱」。平成30年度税制改正大綱では、事業承継税制の改正が大きな目玉の一つになると言われている。本連載では、事業承継税制が改正される背景と現状の制度について解説する。

税制改正に多大な影響力を持つ「税制改正大綱」

我が国における税制改正は、12月半ばに与党により「税制改正大綱」が発表され、与党の大綱をベースとして、12月下旬に財務省と総務省が「税制改正大綱」をまとめる。その後、国会での審議・採択が必要であるが、この「税制改正大綱」は税制改正に多大な影響力を持つ。

 

平成30年度税制大綱では、「事業承継税制」の改正が大きな目玉の一つになると言われている。では、なぜ、事業承継税制に注目が集まるのであろうか。今回はその背景と現状の事業承継税制について述べる。

日本の中小企業における「事業承継」の現状とは?

我が国において、経営者の高齢化が進み、その平均年齢は61.19歳となっている(東京商工リサーチ、2016年全国社長の年齢調査)。10年後には経営者の平均年齢は70歳に到達すると言われ、過半数の会社では、後継者が不在であるとも言われている。

 

「後継者がいない」というそれだけの理由で、黒字の会社や確かな技術のある会社の廃業が相次いている。廃業とは、単に会社がなくなることを意味するのではない。そこで働く従業員、取引先、金融機関など様々な利害関係者に影響が及ぶ。地域経済、ひいては日本経済全体の弱体化につながる由々しき問題である。

 

事業承継が円滑に進まない理由は様々である。そもそも、少子化により子供自体が少なくなっている。子供がいる場合であっても、ただでさえ、厳しい経済環境において、子供は中小企業の経営の先行きに不安を感じている。その上、連帯保証を引き受けてまで、会社を継ぐことに躊躇してしまうのも致し方ない。

 

円滑な事業承継を妨げているそれ以外の問題の1つが、株式を承継した場合に生じる相続税や贈与税の問題である。

株式の承継にまつわる「相続税」「贈与税」の問題

 そもそも、株式は、単なる財産権としての価値を有するだけではなく、会社の支配権としての価値を同時に有するという二面性を持つ。たとえば、トヨタ自動車の株式を保有していれば、株式市場で売却することで資金を得ることができ、株主総会などを通して会社の経営に関わることもできる。大多数を占める非上場の中小企業の株式でも基本的には同様である。ただし、トヨタ自動車のような上場企業とは異なり、売却して換金することは容易ではなく、株主は少数の身内で固められているのが通常である。

 

非上場株式も、相続が生じた場合には相続財産とされ相続の対象となる。このとき、2つの問題が生じうる。

 

①遺産分割の対象としての株式

 

1つ目には、遺産分割の対象となることを意味する。たとえば、甲社の先代経営者Aが死亡したとする。その相続に関して、相続人が、その子供2名(BとC)であり、Bが2代目経営者として甲社の経営をとりしきる一方で、Cは家業を離れて上場企業でサラリーマンをしていたとする。民法では、Aの遺産は、BとCにそれぞれ1/2ずつ分割されるのが原則である。Aの相続財産が甲社株式150株のみで現金などがなかったとすると(実際に中小企業の経営者の資産は、自社株式が大半を占めることが多い)、甲社の経営とは関係のないCにも株式75株を相続させなければならない。CがBに個人的な反感を抱いた場合、株主としての権利を行使して、甲社の経営を妨害する事態も考えうる。実際に、そのような「骨肉の争い」は枚挙に暇がない。このように、株式が分散し、会社の支配権が不安定になるという問題が生じる。

 

②相続税の対象としての株式

 

2つ目には、相続税の対象となることを意味する。たとえば、さきほどの甲社株式が3億円の評価であった場合、Aが死亡して相続が生じ、法定相続人がBとCの2名である場合には、約7,000万円の相続税が発生する。相続税の納付は金銭が原則であり、Aが現金を残していなければ、甲社株式を売却し換金したうえで、相続税を納付する必要が生じる。しかし、非公開の中小企業の株式を、会社が望むような株主に、望むような金額で売却することは容易ではない。このように相続税の負担という問題が生じる。

 

ここで、株式を分散させず、相続税の対象としないためには、Aの生前に甲社株式をBに贈与、または売却することが考えられる。しかし、贈与の場合には贈与税を負担しなければならず、売却の場合にはBが株式買取り資金を準備する必要がある。甲社株式の評価が高い場合には、贈与税や買取りのための資金調達が問題となる。

 

このように株式の承継における相続税、贈与税の問題が、円滑な事業承継を阻害しているのである。

 

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