前回は、プライベートバンクを利用する際の注意点を紹介しました。今回は新しい形のプライベートバンク「バンク・フリック」の概要を説明します。

資産運用ビジネスに特化した新しいプライベートバンク

バンク・フリックは、リヒテンシュタインで1998年に創業された新しいプライベートバンクです。昔ながらの伝統的なプライベートバンクではありません。

 

リヒテンシュタインやスイスにあるほとんどの銀行は、依然としていわゆる「プライベートバンキング」に専念しています。これは一般にクライアントに口座開設を提案して資産運用をするサービスという意味です。

 

バンク・フリックにも資産運用のサービスはありますが、少し異なります。当行は、クライアントが投資をするための商品を提案します。

 

一任勘定の資産運用サービスをやめ、ルクソール・アセット・マネジメントやブルーマー&パートナー等のプロの運用会社と組んで資産運用ビジネスを展開していく道を選んだのです。

 

我々は、四つの分野に専念して事業を展開しています。

 

一つめは、顧客に最大利益をもたらす専門性の高い運用会社と一緒に行うプライベートバンキング・サービスです。

 

二つめは、幅広い分野の資金決済サービス。バンク・フリックは、リヒテンシュタインで唯一マスターカード、ビザカードと提携している銀行です。

 

三つめは、ローンビジネスです。我々は、住宅ローンやインターネット上でビジネスを行う企業を対象にしたローンを提供しています。

 

四つめは、資産防衛と相続の分野における特別なサービスです。

 

我々は、これらの異なる分野を統合した金融ビジネスを「クロスオーバーファイナンス」と呼んでいます。

「カストディビジネス」に注力し、最適な商品を提案

バンク・フリックは、いわゆる一任勘定の運用を取り扱っていません。当行は商品をプロデュースしますが、直接的にクライアントにアドバイスすることはしていません。自社商品を持ち、それをクライアントに勧めていくことは得策ではないと考えているからです。

 

その代わり、外部の運用会社、法律事務所、信託銀行など、いわゆる仲介機関と連携しています。

 

仲介機関はそれぞれに顧客を持ち、顧客のために最適な商品を選択することを常に心がけています。彼らは、バンク・フリックが基本的にカストディバンクとしてのサービスを提供することを目的としており、彼らのクライアントを奪おうとすることはないと理解しています。

 

我々のタスクは、仲介機関と共にクライアントに境界を越えた最適な商品の組み合わせを提案していくことです。

 

よく見られるプライベートバンクの資産運用の手法においては、異なるタイプがいくつかあります。

 

一つの方法は、クライアントのすべての資産に対して責任を負う1社の運用会社と取引する方法。もう一つは、複数の運用会社と関わることで資産運用の手法において「競争」と同時に「多様性」をもたらすケースです。

 

この二つの方法を比べると、資産運用において注目すべき有利な点と不利な点は明らかです。

 

1社の運用会社とのみ取引をしている場合、責任の所在は明確です。一方、複数の運用会社と取引をする場合、能力の異なる運用会社を比較対照しながら、使いわけることができます。一部の運用会社は、他社と比較してリスクを好む傾向が強いということもあるでしょう。

 

バンク・フリックはカストディビジネスに注力することで、同時に複数の運用会社と提携してクライアントに世界中で最も優れた商品・サービスを提案することを可能にしています。

プライベートバンクの嘘と真実

プライベートバンクの嘘と真実

篠田 丈

幻冬舎メディアコンサルティング

スイスの伝統的プライベートバンク経営者が共著・取材協力! その実態が初めて明かされる! 相続税増税や海外資産の取り締まり強化など、富裕層が持つ資産に対する捕捉は厳しさを増す一方。そんな中で注目されているのが「…

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