まずは「投資対象の不動産」を決める
不動産の運用は一刻も早く始めるほうが有利となります。ことに、不動産の組み替えを進める際に「事業用資産の買換え特例」を利用したいのであれば、その期限が限られているだけに、今すぐにでも投資の準備に取りかかる必要があります。
実際に投資を始めるうえでは、大前提として、どのようなタイプの不動産を投資対象にするのかを決めることが必要となります。
もっとも、不動産投資の対象としては、様々な選択肢がありえます。そのために、「一体どれにしたらよいのだろうか・・・」と迷い、思い悩むことになる人は少なくないはずです。
そこで、本連載では、不動産選びのポイントや、投資対象としてお勧めできる具体的な不動産の選択肢などについて詳しく解説していきましょう。
オフィスビルは「安定した収益確保」が難しい
不動産投資を行ううえでは、「長期にわたり収益を着実に確保できるのか」という収益の安定性を何よりも重要視しなければなりません。
そのような観点からみた場合に〝投資してはいけない物件〞つまりは安定した収益を期待できないタイプの不動産があることを、まずはしっかりと意識しておく必要があります。
たとえば、オフィスビルはその代表例といえるでしょう。
ひと昔前の不動産投資のノウハウ本などの中には、マンションやアパートのような居住用物件に比べて、賃料をより高く設定できることや、内装費をかけずに済むので建設コストを抑えられることなどをあげて、オフィスビルへの投資を積極的に勧めているものもありました。
もしかすると、そうしたメリットに魅力を感じ、投資の選択肢としてオフィスビルを積極的に検討している人もいるかもしれません。
しかし、目下、日本のオフィス市場は大きく冷え込んでいます。そのため、丸の内や虎ノ門、品川などビジネスの中心地となっているごく一部の限られたエリアを除けば、駅前の立地や築浅のような好条件の物件であっても、テナントづけが難しくなっています。
しかも、オフィスビル市場は今後の展望も決して思わしいものではありません。下記にあげたのは、少子高齢化が不動産の需要等に与える影響について、日本生命のシンクタンクであるニッセイ基礎研究所が分析し、まとめたリポートから抜粋したものです。
●オフィス・・・・・需要は減少
●シニア不動産・・・需要は増加
●不動産運用・・・・需要は増加
●商業施設・・・・・影響小
●ホテル・・・・・・影響小
●物流施設・・・・・影響小
●インフラ・・・・・影響小
●海外不動産・・・・影響小
今後の需要に関して、シニア不動産や商業施設など他の不動産・施設とは異なり、オフィスに対してはネガティブな判断が下されていることがわかります。
このような専門家による消極的な評価に鑑みても、オフィスビルへの投資はリスクが大きいといわざるをえません。実際、私自身もオフィス関連の物件は全く保有していません。