今回は、オフィス賃貸借契約の保証人設定は、民法改正でどのように変わるのか、「法人の保証」という観点も含めて見ていきましょう。

民法改正により、連帯保証人設定の要件は厳格化

オフイスの新設・移転を検討している企業が、テナント募集をしているビルに不動産仲介会社などを通じて入居を打診した場合、一定の規模・グレードのビルともなると、いくつかの手順を踏むことになります。

 

まず、所定の書面の提出とともに、一般的な信用情報会社である帝国データーバンクやTSRなどの当該企業への評点と、連帯保証人個人への評価を加味したうえ、検討します。

 

その結果、打診をそのまま受諾するケースはもちろん、企業の事業内容が物足りないなどの理由があれば、保証金や賃料の条件の引き上げや別途の連帯保証人を要求するなどした上で、賃貸借契約を受諾します。場合によっては「企業の内容不明」として申し込みを断る場合もあります。

 

ベンチャービジネスや中小企業の最新動向についての信用情報会社のデーターは乏しく、入居企業の良し悪しの判断には苦慮することも多いようです。また、今回のテーマのとおり、民法改正によって、この連帯保証人設定の要件は、貸し出す方も借り受ける方も厳格化したことになります。

今後の拡大が予想される「法人保証」を利用した契約

一般的な家賃保証会社は、賃貸住居を借り受ける個人を対象に不払い家賃を不動産会社に立て替え、賃借人本人もしくは連帯保証人から回収する事業を行っていますが、小規模・一定のグレード以下の物件については、個人事業主向けや連帯保証人必須として小法人向けに個人同様として個人与信・審査による保証を行なっています。今回の民法改正により、今後の連帯保証人の家賃保証会社における扱いに関心が持たれます。

 

ちなみに筆者の会社である日本商業不動産保証では、従前より保証の契約上には連帯保証人の付帯を必要としない法人評価のシステムにより保証を提供しています。家賃に限らず、法人賃貸借契約上の債務も保証の対象とし、保証提供を前提に賃貸借契約の条件緩和・現金預託の減免にご利用いただいています。

 

民法改正により、賃貸借契約のあり方は大きく変わることになるでしょう。連帯保証人に対する変更規制により、事業性の物件であるオフィスの賃貸借では、これまでポピュラーではなかった「法人の保証」を利用した契約が、飛躍的に拡大していくものと予想されます。

本連載は書下ろしです。原稿内容は掲載時の法律に基づいて執筆されています。

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