2017年度、国会衆参両院において民法改正が可決・成立しました。本連載では、この民法改正とオフィス賃貸への実務面での影響、連帯保証などについて、保証会社の立場から解説します。

債権にまつわる民法が大きく改正・・・その経緯とは?

2017年の民法改正は、債権法の改正ともいわれています。しかし、債権法という名称の法律があるわけではなく、民法の一部分である債権編のことをそのように呼称しています。この債権編では、「契約」「事務管理」「不当利得」「不法行為」とこれらに関わる「債権」総則が規定されていますが、今回の改正対象は主に「契約」と「債権」に関する部分となります。

 

民法は、日常生活や経済活動を律する重要かつ基本的な法律です。1896年(明治29年)に制定され、これまでに部分的な見直しが行われていましたが、制定から既に120年が経過していることから、社会・経済の変化への対応や国民一般にわかりやすいものとするために抜本的な見直しが行われました。つまり、明治時代に制定された民法を、現代の事情に合わせたものにしました。また、120年前の制定以来、多くの判例が形成されてきましたが、法律条文からは読み取れないなど弊害もあったことから、明文化してわかりやすくルール化する必要性が生じていました。

 

今回の法制審議会では、過大な債務を本人の認識がない中で負うことにもなる根保証(最大責任額の決めのない無制限の保証)や、事業性資金の返済義務について、最終的に個人やその家族が負っている状況が問題視されました。

 

事業と個人の責任の分離、個人債務の救済について議論され、改正に至ることになりました。

賃貸オフィス物件を借りる際、多くは連帯保証人が必要

現行法下では、例外的な上場企業などを除き、賃貸オフィス物件を借りる際には多くの場合、連帯保証人を求められます。事業用として企業が借り入れる場合は、その企業の代表者が個人としてなる場合が多いようですが、中には別の方になってもらうように求められることもあります。

 

この連帯保証人のシステムですが、賃料が払えなくなってしまった賃借人(テナント)の代わりに債務を保証することは当然ということですが、負っている責任はどれほどの大きさなのか、連帯保証人を途中で辞めることはできるのか、などが問題となってきます。

 

実は、賃貸借契約上の賃借人(テナント)の債務は、賃料だけではありません。

 

①延滞の賃料

②原状回復費

③各種違約金

 

上記の債務も発生します。

「保証人」と「連帯保証人」が異なる点は3つ

保証人と連帯保証人の異なる点としては、以下の3つが挙げられます。

 

①連帯保証人は「まず債務者(賃借人、テナント)に請求してくれ」とは言えません。

 (催告の抗弁権)

保証人(≠連帯)の場合、賃貸人から賃料を支払うように請求されても、「まずは賃借人に請求して下さい」というようにまずは請求を拒否することができます。連帯保証人の場合は、この賃借人に請求してくれというように抗弁できません。請求をされれば債務を支払わなければならないという立場となります。

 

②連帯保証人の場合は保証人同士で責任を分割できません。

 (分別の利益)

例えば、債務者(賃借人、テナント)の債務が300万円とします。保証人(≠連帯)が3人であったなら、100万円毎しか返済する義務がないのに対し、連帯保証人は、何人いたとしてもそれぞれが総額である300万円の返済支払い義務があります。債権者(賃貸人 オーナー)は連帯保証人のうちのだれかに請求すればそのだれかはその支払い義務を負っていることになります。

 

③債務者(賃借人、テナント)の資産の存在を証明しても対抗できません。

 (検索の抗弁権)

債務者(賃借人、テナント)に資産があり、支払い能力がある事を証明すれば、その財産を差し押さえるように主張することが、保証人(≠連帯)ならできます。しかし、連帯保証人の場合は、証明しても対抗することができません。連帯保証人は債務に関しては債務者(賃借人、テナント)と責任は同じということになります。

 

 

とても重く、大きな金額の責任を負う連帯保証人です。「やっぱり辞めたい」「連帯保証人契約を解除したい」と考える方はいるでしょう。しかし、この連帯保証人の契約解除は、なかなか関係者合意が取れません。債務者(賃借人、テナント)が債務を支払えない際の担保ですので、債務がなくなるまでは原則として解除することができません。

 

法律に定められている契約の解除事由は、「法定解除」「約定解除」「合意解除」の3つですが、連帯保証人を辞める際には、合意が取りにくい「関係者の合意解除」しか方法がないのです。

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    本連載は書下ろしです。原稿内容は掲載時の法律に基づいて執筆されています。

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