分筆の際に価格調整を行うケースも
分筆を行う際には、分筆後の土地の評価額が共有者各自の持分割合に応じた形になるように配慮しなければなりません。具体的に述べると、2000万円の評価額の土地を、持分が2分の1ずつの2人の共有者で分筆する場合には、それぞれが単独で所有することになる土地の価値が等しく1000万円になる必要があります。
万が一、分筆によって各共有者の取得する土地の価格に過不足が生じるようであれば、持分の価格以上の土地を取得する共有者に超過分の対価を払わせ、過不足の調整をすることになります。
たとえば下記図表のような土地をX、Y、Zの3人で分筆する場合には、場所によって、土地の価格が異なる場合も考えられます(道路に面していない部分を分筆された場合など)。その場合には、不足部分が生じた者に対して金銭等で賠償を行い、各共有者が公平に分割分を取得できるように調整します。
[図表]分筆の仕方によって土地の価格が異なる
ちなみに、判例でも以下のように、現物分割を行う際にこうした過不足の調整が必要となる場合があることが認められています。
「…民法258条による共有物分割の方法について…現物分割をするに当たつては、当該共有物の性質・形状・位置又は分割後の管理・利用の便等を考慮すべきであるから、持分の価格に応じた分割をするとしても、なお共有者の取得する現物の価格に過不足を来す事態の生じることは避け難いところであり、このような場合には、持分の価格以上の現物を取得する共有者に当該超過分の対価を支払わせ、過不足の調整をすることも現物分割の一態様として許されるものというべきであり…分割後のそれぞれの部分を各共有者の単独所有とすることも、現物分割の方法として許されるものというべき…かかる場合においても…過不足の調整をすることが許されるものと解すべきである」(最大判昭62年4月22日)
裁判所の判決により共有状態の解消を図る方法とは?
【共有名義を解消する方法(7)共有物分割請求訴訟】共有物の分割を訴訟の形で行う
これまでの連載でご紹介してきた、(1)全部売却、(2)一部売却、(3)持分移転、(4)持分買い取り、(5)持分放棄、(6)土地の分筆、までの手段が当事者同士の話し合いによる解決を前提とするものであるのに対して、(7)共有物分割請求訴訟は、裁判所の判決により共有状態の解消を図るものです。
貸し金の返還を請求したり、土地の明け渡しを求めたりする通常の訴訟に比べて、共有物分割請求訴訟では裁判所の裁量の範囲が大変に広く認められています。
通常の訴訟においては、訴えた側、つまり原告は裁判によって実現したいことを具体的に明らかにしなければなりません。たとえば、貸し金の返還を請求する場合には「貸したお金をいくら返してほしいのか」を、土地の明け渡しを求める場合には「どの場所(住所)の土地を明け渡してほしいのか」を訴状で示さなければなりません。そして、裁判所は、この原告の求めに対応した形で、最終的に請求を認めるのか、認めないのかを判決によって明らかにします。
しかし、「共有物分割の訴えにおいては、当事者は、単に共有物の分割を求める旨を申し立てれば足り、分割の方法を具体的に指定することは必要でない」(最判昭57年3月9日)とされています。そして、仮に訴状に分割方法、内容などが具体的に明示されていたとしても、当事者としての提案の意義を有するにとどまり、裁判所の判断を法的に拘束するものではないとされています。
たとえば、原告が訴状で共有名義不動産の現物分割を求めていたとしても、裁判所はそれに縛られることなく、代償分割を命ずる判決を出すことも可能なのです。