共有名義不動産の売却には共有者全員の同意が必要
書籍『あぶない!!共有名義不動産』第二章で取り上げた【事例17】のケースでは元夫が行方不明だったために、Qさんは「持分を売却できるのだろうか」と不安を抱いていましたが、自分の持分だけを売却するのであれば、共有者が行方不明であっても問題はありません。
それに対して、持分のみではなく不動産のすべてを売却したい場合に、共有者の中に行方不明者がいるようなケースでは別の考慮が必要となります。
共有名義不動産を売却する際には、前述のように共有者全員の同意が必要になります。同意していない共有者が1人でもいれば売却することはできません。
すると、共有者の中に行方不明者がいる場合には、その者の同意を得ることができない以上、他のすべての共有者が同意をしていたとしても不動産を売ることができないことになります。このような場合には、どうすればよいのでしょうか。
まず、住民票などを手がかりに追跡調査を行って行方不明となった共有者を探し出すことも考えられますが、探偵でもない一般の人が簡単に見つけられるかどうかは疑問です。
そこで、行方不明になった共有者がどうしても見つからない場合に、不動産を売却するための方法について触れておきましょう。
共有者が行方不明なら不在者財産管理人を選任
まず、不在者財産管理人の制度を利用することにより、共有者が行方不明のままでも不動産の売却を行うことが可能となります。
不在者財産管理人とは、行方不明者の財産を管理するために家庭裁判所によって選任される者です。この制度を利用するためには、不在者の配偶者、相続人にあたる者、債権者等の利害関係人もしくは検察官の申立てが必要となります。
その際、以下の書類を裁判所に提出しなければなりません。
[不在者財産管理人申立て必要書類]
●申立書
●不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
●不在者の戸籍附票
●財産管理人候補者の住民票または戸籍附票
●不在の事実を証する資料
●不在者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書、預貯金及び有価証券の残高がわかる書類〈通帳写し、残高証明書等〉等)
●申立人の利害関係を証する資料(戸籍謄本〈全部事項証明書〉、賃貸借契約書写し、金銭消費貸借契約書写し等)
不在者財産管理人の権限は、①財産の保存行為、②性質を変えない範囲での利用・改良行為、に限られており、これらを超える行為を行う場合には、家庭裁判所の許可を得る必要があります。
そのため、不動産を売却する際には、不在者財産管理人の選任を経て、さらに家庭裁判所にその許可を求めなければなりません。