ノベル版『女騎士、経理になる。』~第3章その①

原作:Rootport
イラスト:こちも
提供:デンシバーズ
ノベル版『女騎士、経理になる。』~第3章その①

幻冬舎コミックス運営のWEBマンガ雑誌「デンシバーズ」と幻冬舎ゴールドオンラインによる特別コラボ企画。デンシバーズの好評連載『女騎士、経理になる。』の原作小説で、2016年6月24日に発売された単行本『女騎士、経理になる。①鋳造された自由』のプロローグと第1章、第2章、第3章を無料公開します。今回は第3章「リテラシー」その①です。

▼魔国・魔王居城

 

魔王「双子の赤字だと?」

 

吸血男爵「はい。わが国の経済は、いわゆる『双子の赤字』となっています。財政収支と貿易収支が、ともに赤字です」

 

魔王「財政赤字……つまり、税収よりも政府の支出のほうが多いのだな」

 

吸血男爵「戦費や社会福祉費がかさみ、支出超過となっています。不足分は国債の発行で補っていますが、いつまで続けられるか……」

 

魔王「そして、貿易収支も赤字か」

 

吸血男爵「人間国や華国、影国との貿易では、輸入が輸出を大幅に上回っています。ここ数年、慢性的に」

 

魔王「たしか先代の魔王は、厳しい輸入規制を敷いたのだったな」

吸血男爵「しかし、密貿易と闇市が広がるばかりで、歯止めがききませんでした」

 

暗黒竜王「おのれ人間どもめ! 領土侵犯のみならず、経済でも我々を蝕むとは!」

 

魔王「うむ。我も竜王殿と同じ気持ちだ」
暗黒竜王「短命で魔法も使えぬ劣等種族の分際で……」

 

吸血男爵「寿命は短くとも、繁殖力はずば抜けています。また、魔法が使えない代わりに、彼らは工業を発展させています」

 

暗黒竜王「これは驚きましたな男爵様。人間に肩入れするおつもりか?」

 

吸血男爵「まさか、ご冗談を。……ただ、彼らを侮るべきではないと申しているのです。たとえば『火薬』のことを、お2人ともご存じでしょう?」

 

魔王「当然だ。魔法を使わずに火をおこす粉だろう。あの粉で鉛玉を飛ばす装置は、わが軍に多大な被害を与えた」

 

吸血男爵「たしかに人間は、議会制民主主義も知らぬ野蛮な種族です。しかし、工業技術では魔国に先んじていると認めざるをえません」

 

暗黒竜王「ふん、何が工業だ! できの悪い魔法の代替品でしかなかろう!」

 

吸血男爵「しかし、それが今回の『双子の赤字』の原因でもあります」
魔王「ふむ?」

 

吸血男爵「工業技術の差によって、わが国の政府支出が無駄になってしまっているのです」

 

魔王「政府が支出を増やせば、そのカネは民草を潤して国を豊かにする……。そう進言されたのは竜王殿だったな?」

 

暗黒竜王「まさしく。戦争が起きると景気が良くなるのは、戦費の支出が増えるからです。失業者に兵役という仕事を与えて、収入の増えた庶民は消費も増やす……。そして好景気になるのです」

 

魔王「であれば、好景気によって税収も増えなければおかしい。しかし、今の魔国は財政赤字ではないか」

 

暗黒竜王「そ、それは……」

 

吸血男爵「どんなに景気が良くなって、人々が消費を増やしても、消費される製品が国内で生産されていなければ、輸入が増えるだけです。国内産業は発展しません」

 

暗黒竜王「ぐぬぬ……」

 

吸血男爵「戦争のために政府の支出を増やしたので、今の魔国は好景気です。失業率は下がり、庶民の暮らしは豊かになりました。けれど、そのカネは輸入品の消費に使われています」

 

魔王「その結果が双子の赤字か」

 

吸血男爵「はい。税収よりも支出の多い財政赤字と、輸出よりも輸入の多い貿易赤字が、同時に発生してしまったのです」

 

カタッ

 

吸血男爵「今までの話をまとめたものが、こちらのパネルです。……双子の赤字が膨らみ続ければ、やがて国が破綻します。今の状況は、敵に塩を送っているようなものです」

 

魔王「ううむ……」

 

 

吸血男爵「魔国の下院議員代表として、私は人間国との休戦をご進言したい」

 

暗黒竜王「なんだと!?」
魔王「真意を測りかねるが……?」

 

吸血男爵「戦費による財政赤字を解消し、戦争に浪費していたカネを国内産業の振興に充てるべきです。でなければ、戦争が終わる前に国家が破綻します」

 

暗黒竜王「フハハ! 冗談はよしていただきたい」
吸血男爵「私は冗談など──」

 

暗黒竜王「戦争が起きたのも、貿易赤字になったのも、すべては人間のせい。やつらを絶滅させなければ、根本的な解決にはなりません。休戦などと寝ボケたことは言わず、今こそ、やつらの大陸に攻め込み、敵を滅ぼすべきです! ……上院議員代表として、遠征軍の編成を進言したい」

 

吸血男爵「なっ!? 下院としては、戦費増大は認められません!」

 

暗黒竜王「では、この国が人間に蝕まれるのを黙って見ていろと? どんな大木だろうと、害虫を放置すればやがて枯れ果てますぞ!」

 

吸血男爵「害虫駆除のために森に火をつけるバカはいません! 今は休戦して堪え忍ぶべきです!」

 

暗黒竜王「笑わせないでいただきたい! 遠征軍を送るべきです!」
魔王「やめんか、2人とも」

 

男爵・竜王 ハッ

 

吸血男爵「お、お見苦しいところをお見せしてしまいました……」
暗黒竜王「め、面目ない……」

 

魔王「二人の意見はよく分かった。大統領権限により、特別議会を招集しよう」
吸血男爵「特別議会、ですか……?」

 

暗黒竜王「魔国に暮らす各種族の代表者を集めて討議させる……その議題は?」

 

魔王「休戦か、遠征軍か。これは魔国の将来を左右する決断だ。熟議を尽くすべきだろう。お2人には準備をお願いしたい」

 

男爵・竜王「「はっ!」」

女騎士、経理になる。 ①鋳造された自由

女騎士、経理になる。 ①鋳造された自由

原作:Rootport,イラスト:こちも

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