義を重んじるタイプは、会社のために力を尽くす
人材の評価基準として、定量性評価という考え方があります。これはつまり、例えば営業であれば社内でトップセールスを記録したとか、メーカーの企画開発担当者であれば誰もが知るようなヒット商品を世に出したなどの実績がそれに該当します。
これらは可視化・数値化できる評価を指しますが、私たちが人材を見る場合、評価基準はその限りではありません。
当然のことながら、定量性評価できない部分にも評価すべき重要な要素が存在します。私たちはそうした側面にも着目し、そのかたのポテンシャルを見極めたうえで、企業とのマッチングを図らなければなりません。
では、数値化できない評価基準とは具体的に何か。一つには「無私の精神」「利他の精神」といった人格や人間性が挙げられます。
倒産しかかった企業、あるいは倒産した企業に残り、最後まで会社や部下のために尽力したような義を重んじるタイプ。こういうかたは信頼できますし、高い評価に値します。別の企業に移ったとしても、会社のために渾身の力を発揮してくれることでしょう。
人格は「生き様」に現れる
人格や人間性は生き様に現れます。プロスポーツの世界を例に挙げれば、野球のイチロー選手やサッカーの三浦知良選手。勝負の世界で生きている彼らには、常に数値化された評価がついて回ります。イチロー選手ならば打率であったり、三浦知良選手であればアシストや得点。
しかしながら、彼らは年齢的にも、シビアな勝負の世界において、多寡を競うような数値化された評価を取ることのできる選手ではありません。それでも、彼らは高い人気、評価を得られているのはなぜでしょう?
その答えが彼らの姿勢、生き様にあると思うのです。絶対的な数字的成績ではない、人を惹きつける魅力がある。
年齢による体力の衰えはアスリートの宿命です。そんなフィジカルな面での課題を負いつつも、彼らは若い選手と同じように、いや、それ以上のトレーニングを行ってパフォーマンス維持に取り組んでいますし、何よりそれを補うのは時間をかけて磨き上げた技術です。
勝負にこだわる世界のなかで、競技を通じて人としてあるべき姿、武道にも通じる「道」を見せてくれています。彼らが一流のアスリートと言われる所以がそこにあるのではないでしょうか。
残念ながら、現在の日本の実社会のなかでは、何かにつけて数値化することが評価システムの基軸となってしまいがちです。
競技への姿勢や生き様も評価されるアスリートのように、私たちが候補者を評価する際にも、数値化できる「APP」、「技」の部分だけではなく、その人の「体」と「心」もしっかり見て評価することが重要となるのです。