減価償却を知らずに「節税」はできない
神奈川県で貿易商「U商事」を営むS社長は、最近、節税効果が非常に高い投資として海外不動産への投資をすすめられ、経理担当のY担当取締役に相談することにしました。
「海外の不動産は、日本みたいに買ったとたんに資産価値が半分になるような物件じゃないらしいよ。税務申告は日本でするけど、減価償却も日本の法律でOKなんだって。数年で償却できちゃうけど、資産価値はほとんど購入したときと変わらない」
「どこの物件を買う予定ですか?」
「オーストラリアとかがいいかな」
「資産価値の維持を考えれば、米国か欧州でしょう」
さて、U商事でも話題になっていた「減価償却」ですが、節税を成功させるためには、この減価償却について完璧に近い状態で理解しておく必要があります。いまひとつわからないという人のために、概要を簡単に説明しておきましょう。
ちょっと難しそうですが、実は意外に単純で、しかも節税にはおおいに役立つ「会社の味方」になってくれる仕組みなのです。
毎年どんどん資産が減っていく
減価償却というのは、会社が何年にもわたって使うような備品などを購入した場合に適用されます。 つまり「一晩50万円の高額接待」も「文房具を30万円分まとめ買い」も減価償却とは無縁ということ。金額の問題ではなく、手に入れたものが手元に残り、しかも償却品ではなくて数年以上使うものを購入した場合の話ということです。
たとえば、社宅、社用車、パソコンなどが、もっともわかりやすい減価償却の対象です。
こうした買い物をした場合、その費用を「使う年数に応じて1年ごとに小分けして経費にする」のが減価償却です。
40万円のパソコンを購入した場合で、わかりやすく単純化して説明してみましょう。経費としてかかった40万円を、全額最初の年に一括で経費にすることはできません。パソコンの場合は、4年間でその価値がほぼなくなるという意味で、減価償却の年数は4年と定められています。毎年10万円ずつ、4年間にわたって経費として認められるということです。
つまり、パソコンの資産価値は、購入当初の40万円から、毎年10万円ずつ減っていくと考えるのが減価償却の考え方というわけです。帳簿には、会社の資産すべてを記入しますが、資産としてのパソコンは毎年10万円ずつ安くなっていくのです。
さて、「経費」の側面から考えると、2年目からはまったくお金を支払っていないにもかかわらず、10万円ずつを経費として計上することになります。これは初年度の投資分を毎年少しずつ回収している、と考えられるのです。 つまり「買ったものを、何度かに分けて経費にする」のが減価償却だと考えておけば間違いありません。
対象になるのは、「10万円以上であり、償却資産として認められるもの」です。償却資産になるのは、建物や設備だけではありません。たとえば、無形固定資産といわれるソフトウエアや営業権も償却資産のひとつです。動物、植物も償却資産に入ります。これに対して「非償却資産」とされているのは、土地や借地権、骨董品など。これは、年数が経っても価値が減っていくものではない、と考えられるからです。