前回に引き続き、「未払賞与」の処理に関するポイントを解説します。今回は、損金不算入を避けるためのアドバイスも併せて見ていきましょう。※本連載では、税務調査の現場実務に精通し、国際税務コンサルタント事務所の所長として活躍する渡邊崇甫氏の著書、『業種別 税務調査のポイントー国税調査官の視点とアドバイスー』(新日本法規出版)より一部を抜粋し、税務調査の基礎知識や税務処理で誤りやすいポイントなどを解説します。

未払賞与の損金算入には、各要件を満たす必要がある

前回の続きです。本事例においては、労働協約又は就業規則により賞与の支給に関する取決めがなされていないため、未払賞与の損金算入が認められるためには、上記1②(前回の記事を参照)の各要件を満たすことが条件となります。

 

調査官が確認したように、A社においては期末までに通知された賞与が翌期開始後1か月以内に支給されていたものの、使用人であるe氏については、支給日までに退職していたことにより通知した賞与は支払われていませんでした。

 

そうすると、A社が期末までに通知した未払賞与については、上記1②㋐及び㋑の要件を満たしておらず、期末までに実際に支給されたものと同視できる状況にあったとはいえないことから、未払賞与として計上した全額が損金の額に算入されないこととなります。

調査では「期末までに通知していたかどうか」が議論に

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好調な業績をあげた事業年度において、その利益を使用人に賞与という形で還元し、それを損金算入することにより同時に節税対策を図ろうと考えるのは、経営者としては自然な発想です。

 

その事業年度内に賞与を支払っていれば、支給額が妥当なものである以上、無条件で損金算入が認められますが、未払賞与を計上する場合には上述のように一定の要件を満たす場合に限り損金算入が認められます。

 

本事例では、退職者には支給されない未払賞与の損金適格性に焦点を当てて解説しましたが、調査現場では、実際に期末までに「通知」をしていたかどうかについてもよく議論になります。

 

これについては、例えば、通知書の控えを作成し受取人にサインや押印をしてもらうなど、期末までに通知した事実を立証できる資料の用意をしておくことが望まれます。社内電子メールや電子掲示板などの利用も日付が客観的に確認できるので有効と考えられます。

業種別 税務調査のポイント ー国税調査官の視点とアドバイスー

業種別 税務調査のポイント ー国税調査官の視点とアドバイスー

渡邊 崇甫

新日本法規出版

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