「運動会を見るだけじゃだめなの?」夫のひと言による変化
翌年、美香さんから運動会の日程が送られてきました。
「今年も来られそう?」
「もちろん行くよ」
恵子さんはすぐに返信しました。
ところが数日後、スーパーで「孫たちに何を持っていこう」と話していると、隆さんから言われます。
「今年は、運動会を見るだけじゃだめなの?」
恵子さんは一瞬、何を言われたのか分からなかったそうです。
「別に何もしてやるなって言ってるんじゃないよ。朝早く出て運動会を見て、それから飯を作って泊まって、次の日まで孫の相手をしてるから疲れるんだろう」
言われてみれば、その通りでした。運動会に行くことと、娘一家のために一日中動くことを、恵子さん自身がひとまとめにしていたのです。
そこで今年は、美香さんにも伝えました。
「運動会は行くけど、終わったらそのまま帰ろうかな。今年は夕飯も手伝わないことにする」
すると娘はあっさり、「そのほうがいいよ。いつも帰ってから疲れてるでしょう」と答えました。
当日は、手土産も孫たちが好きなお菓子を少しだけ。朝早く家を出て運動会を楽しみ、終了後は娘宅へ寄らず帰路につきました。途中のサービスエリアで隆さんと夕食を済ませ、夜には自宅へ到着します。
「疲れてはいました。でも、次の日には普通に買い物に行けました。今までとは全然違いましたね」
内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』によると、60歳以上の25.2%が、子や孫の生活費を「ほとんど」または「一部」負担しています。また、今後優先的にお金を使いたいものとして「子や孫のための支出」を挙げた人も25.8%でした。
子や孫のためにお金や時間を使うことそのものを、楽しみにしている人もいるでしょう。恵子さんも、孫の運動会へ行くことをやめたわけではありません。
変えたのは、「会いに行くなら何かしてあげなければ」と考えていた自分の行動でした。
家族のために続けてきたことも、年齢や体力によって負担は変わっていきます。本人が望んで始めたことほど、周囲も負担に気づきにくいものです。楽しみにしている家族との時間をこれからも続けるために、疲れが残るようになったときには、参加の仕方や担う役割を見直していくことも必要でしょう。
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