(※写真はイメージです/PIXTA)

老後の住み替えというと、体力が落ちたり、車の運転が難しくなったりしてから検討するものと思うかもしれません。しかし、家の売却や大量の荷物の整理、新居探しには相応の労力がかかります。まだ不自由なく暮らせる時期だからこそ、将来を見据えて住まいを変える人もいます。

駅近マンションで始まった生活

夫婦が探したのは、以前の自宅から電車で30分ほどの、比較的大きな駅の近くにある中古マンションです。

 

駅まで徒歩7分。スーパー、ドラッグストア、銀行が徒歩圏内にあり、総合病院へもバスで行けます。

 

選んだのは2LDKでした。戸建てより狭くなるため、まず始めたのは荷物の整理です。子どもたちには、自分の物を引き取ってもらいました。

 

「息子に『これは取っておく?』と写真を何枚も送ったら、『ほとんど捨てていい』って。30年置いてあったのに、そんなものなんですよね」

 

雅彦さんも本や仕事関係の資料を整理し、由紀子さんは食器や衣類を減らしました。

 

半年ほどかけて準備し、戸建てを売却。購入費用や諸経費を含めた資金計画を確認したうえで、中古マンションへ移りました。

 

国土交通省『令和5年住生活総合調査』では、今後住み替え意向のある65歳以上の夫婦世帯のうち、持ち家世帯が住み替え先の周辺環境で重視する項目は「日常の買物などの利便」が43.2%で最も高く、「医療・福祉・介護施設の利便」が15.6%と続きます。

 

住み替えて間もないころ、由紀子さんが夫に言いました。

 

「車、今日も使わなかったね」

 

以前はスーパーへ行くにも車に乗っていました。

 

今は歩いて買い物へ行き、そのまま駅前で昼食をとることがあります。電車に乗れば、以前より気軽に美術館や映画館にも出かけられます。

 

車はすぐに手放さず、しばらく所有することにしました。それでも、利用する回数は明らかに減りました。

 

「家は狭くなりました。でも、生活まで小さくなった感じはしないんです。むしろ歩いて行ける場所は増えました」

 

雅彦さんが意外だったのは、住み替えを「もっと年を取ってから」と考えなくなったことでした。

 

「80歳になってからでも引っ越せたかもしれません。でも家を片付けたり、何軒も物件を見たりするのは、今より大変だったでしょうね」

 

国土交通省『令和5年住生活総合調査』でも、65歳以上の世帯が最近5年間に住み替えた理由では、「高齢期の住みやすさ」が他の世帯類型と比べて特徴的にみられます。さらに、今後住み替える意向のある65歳以上の世帯では、「高齢者への配慮」や「日常の買物などの利便」が重視されています。

 

もちろん、駅に近いマンションへ移れば誰にとっても暮らしやすくなるわけではありません。

 

マンションでは管理費や修繕積立金が継続的にかかります。戸建てを売却して住み替える場合には、売却価格と新居の購入費だけでなく、仲介手数料や登記などの諸費用も含めて資金計画を立てる必要があります。

 

一方で、今は問題なくできている運転や階段の上り下り、家の管理が、10年後も同じようにできるとは限りません。

 

住まいを見直す時期は、「今の家で暮らせなくなったとき」だけではないでしょう。今の生活に困っていなくても、これから何を負担に感じる可能性があるのかを考え、元気なうちに選択肢を確認しておくことも、高齢期の住まいを考える方法の一つです。

 

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