「次の仕事が決まるまで」数ヵ月のはずだった実家暮らし
「帰ってきたいと言われたときは、断る理由なんてありませんでした」
そう話すのは、68歳の美智子さん(仮名)です。70歳の夫・義明さん(仮名)と郊外の戸建てで暮らしています。
45歳の一人息子・翔さん(仮名)は、20代で実家を出て以来、一人暮らしを続けていました。
転機となったのは3年前です。翔さんは当時勤めていた会社を退職し、住んでいた賃貸マンションも更新時期を迎えました。
「次の仕事が決まるまで、実家に置いてもらえない?」
そう頼まれ、美智子さんは了承しました。翔さんが以前使っていた部屋は残っています。数ヵ月程度なら問題ないと思ったそうです。
その後、翔さんは再就職しました。
ただ、以前より収入は下がり、契約期間のある仕事だったため、しばらく実家から通うことに。契約が終わると次の仕事を探し、また数ヵ月働く。そんな生活が続きました。
毎月3万円は家に入れていました。掃除や洗濯は基本的に自分で行い、休日には買い物を頼むこともできます。親子関係が悪いわけでもありません。
だからこそ、美智子さん夫婦も「そろそろ一人で暮らしたら」と強く言う理由を見つけられずにいました。
「働いていないわけでもないし、家で何もしないわけでもない。『出ていきなさい』と言うほど困ってはいなかったんですよ」
気づけば、同居から3年近くが経っていました。その間、夫婦の生活にも変化がありました。
義明さんは70歳になり、仕事を完全に退職。美智子さんも週3日続けていたパートを辞めました。夫婦2人のこれからを考える時間が増えるなかで、美智子さんは別の心配をするようになります。
「私たちが80歳になっても、このままなのかな」
夫にそう話したのは、翔さんが45歳になったころでした。
