80歳母が自分のペースで働き続けるワケ
「月10万円といっても、全部が私のお金になるわけじゃないよ」
澄子さんはそう説明しました。
仕事によっては材料などの費用もかかります。毎月同じだけ依頼が入るわけでもなく、「月10万円以上」はあくまで忙しい月の売上です。
国税庁によると、副業など営利を目的として継続的に得る収入が「業務に係る雑所得」に該当する場合、所得は総収入金額から必要経費を差し引いて計算します。実際の所得区分は活動の実態によって判断されますが、「売上10万円」と「10万円の所得」は区別して考える必要があります。
澄子さんも毎年、仕事の収入と経費を整理して申告しているといいます。
「生活のために稼いでるの?」
そう尋ねると、澄子さんは「それもあるけどね」と答えました。
「朝起きて、今日はこの袖を直そうとか、この日までに仕上げようとか、やることがあるでしょう。それがなくなったら、私は一日何するのよ」
仕事をするのは毎日ではありません。
午前中に2、3時間だけ針を持つ日もあれば、何もしない日もあります。納期にも余裕を持たせ、難しい依頼は断るようになりました。
それでも、仕上げた着物を渡して「きれいになった」と喜ばれることは、今も楽しいそうです。
「昔は子どもの学費もあったし、生活のために働いていた。でも今は、自分ができる仕事だけ。嫌になったらやめます」
健太さんが心配していたのは、母が年金だけでは暮らせず、80歳になっても無理をして働いている可能性でした。実際には、仕事を減らしながら自分のペースで続けていました。
「母の生活費がいくらなのか、仕事をしているのか、貯蓄がどれくらいあるのかも知らないのに、勝手に心配していました」
年金を受給しながら仕事で収入を得ること自体に問題はありません。ただし、公的年金以外の所得がある場合には、金額や所得の種類によって確定申告などが必要になります。国税庁は、公的年金等の収入が400万円以下であっても、公的年金等以外の所得が20万円を超える場合などには、年金所得者の確定申告不要制度の対象外になると案内しています。
長年身につけてきた技術や経験が、年齢を重ねてからも収入につながることがあります。働く日数や時間を減らしながら、自分のできる範囲で仕事を続ける人もいるでしょう。
年齢だけを見て「働く必要はない」「仕事は負担だろう」と決めるのではなく、本人がどの程度の仕事を、どんな理由で続けているのかを見る必要があります。収入だけでなく、生活のリズムや人との関わり、技術を生かす機会まで含めて、仕事がその人の暮らしの一部になっている場合もあるでしょう。
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