介護の貢献などを相続に反映するためには生前の準備が重要
寄与分の主張立証が容易ではないことを知り、恵さんは悔しい思いを抱えながらも、現実を受け止めることになりました。和夫さんを支えてきた日々を思うと、どこか割り切れない気持ちが残ります。しかし、現在の相続法や裁判実務を前提とすると、このような結論になることも少なくありません。
では、和夫さんが亡くなる前に、恵さんの貢献を相続へ反映させる方法はなかったのでしょうか?
もっとも有効な方法は、和夫さん自身が生前に遺言書を作成しておくことでした。
例えば、「自宅を恵さんに相続させる」「預貯金を恵さんに多く取得させる」といった趣旨の遺言を残しておいてもらうことが考えられます。ただ、姉の洋子さんとの間では遺留分の問題も残るため、相続開始後の弁護活動を含めて、弁護士などに相談しながら遺言の内容を検討したほうが良いでしょう。
父である和夫さんに生命保険を契約してもらい、恵さんが受取人になるという方法もあったかもしれません。その際は、多額の生命保険契約は相続財産に持ち戻すよう争われるリスクもありますので、保険会社や弁護士への相談が推奨されます。
そのほか、介護に必要な費用や生活費については、可能なかぎりお父上自身の財産から支出するといったような工夫が考えられます。
介護は、長期間にわたって家族へ大きな負担をもたらすことがあります。しかし、その負担が、必ずしも相続で十分に評価されるとは限りません。
だからこそ、介護が始まってからではなく、元気なうちから家族で将来について話し合うことが大切です。必要に応じて遺言書を作成することが、介護を担う家族への感謝を形にし、将来の相続トラブルも防ぐことにも繋がります。
原田大士
横浜パートナー法律事務所
弁護士
