固定価格買取制度(FIT)の導入以降、日本でも急速に普及をした太陽光発電。一方で、買い取り価格は年々下がってきており、果たして投資のチャンスがまだ残されているのか、気になるところです。本連載では、太陽光発電システムの保守・コンサルティングの専門家である渡邉敬浩氏(アドラーソーラーワークス)が、太陽光発電の基本を解説しつつ、投資のポイントについてお伝えします。

導入量は急拡大、一方で買い取り価格は年々縮小

日本国内における太陽光発電の導入量は、2011年まで住宅用、非住宅用あわせて約560万kWであったが、2012年の固定価格買取制度の制定により2012年~2016年までのたった4年足らずで約2,870万kWと5倍以上の導入量となり1、太陽光発電は環境や基幹エネルギーへの寄与と共に投資、投機の対象としても大きな注目を浴びることとなった。

 

一方、1MWpの発電所の年間発電量は大よそ1,100,000kWh程度と考えてよいと思うが、発電電力の買取価格(円/kWh)は年々下がっている。

 

【図表 各認定年度における1kWhあたりの買取価格】

1MWpの発電所の売電収入において、2012年度に設備認定された発電所と2016年に認定された発電所では4割程度の差異があることになるが、その差異は主に建設側が負担することとなったといってよいだろう。

 

結果、事前の環境アセスメント調査不足、精度の低い発電量予測シミュレーショ、タイトな工期、施工者の技術不足などによるトラブルが起こっているのが現状である。

 

1導入量は平成28年10月 資源エネルギー庁 “FIT法改正を踏まえた調達価格の算定について”による

2利潤配慮期間終了後の価格

トラブルやリスクを回避するデューデリジェンス

発電所の計画から稼働まで必要な調査確認手順は多岐にわたるが、規模の大きな発電所でない限り予算的にすべてを実施するのは不可能である。

 

【図表 発電所の計画から売電終了まで】

今後、リセール市場(中古発電所の転売)が拡大するといわれているが、発電所の品質担保としてデューデリジェンスは必須である。

 

購入検討する際には、最低限、地質調査や現実に即した収支予測、設計の確認、竣工(中古査定)検査、発電量分析などは実施したい。

 

【図表 日影測定分析】

 

【図表 遮光の3次元分析】

 

【設計の不備例(インバータエンクロジャーの影が終日モジュールにかかっている)】

中古発電所を購入する利点は、既に稼働している状況を様々な角度から確認できることにある。監視装置の稼働実績データ、定期点検結果や消耗品・不具合部品交換履歴などは、正に“発電所の履歴書”である。

 

【図表 サーモグラフィ検査により発見された太陽電池モジュールの温度分布異常】

(通常画像/サーモグラフィ画像)

逆説的に、現在発電所を所有している事業者にとっては、上述の情報を保管しておくことで転売時に有利に売却できる可能性を高めることができるという事も認識してもらいたい。

 

また、受変電設備及びインバータのアラート監視、駆け付けのみでは、発電所が止まって長期にわたり発電が確保できないというリスクは回避できるかもしれないが、将来に起こりうる問題の発見や改善はできない。専門家による定期的な発電所検査が様々なリスクを回避する可能性を高めるのである。

 

最後に、事業主が受け取る太陽光発電所の売電料金は国民全体が負担している。その意味で太陽光発電所は事業主だけのものではなく、国の資産であると言えるだろう。太陽光に関わるすべての人に発電所の健全な運営を意識してもらいたい。地域に太陽光発電所が当たり前にあり、当たり前に稼動し電気を供給し続けること、これが永続することで初めて、太陽光発電が日本の基幹電源となりえるのではないだろうか。

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