(※写真はイメージです/PIXTA)

久しぶりに帰省した実家で目にしたのは、想像を超える“母の生活の変化”でした。健康のため、人とのつながりのため――そう語る母の姿はどこか充実しているようにもみえます。しかし、その裏で確実に減り続けていた老後資金。親にとっての「安心」と、子にとっての「不安」がすれ違ったとき、なにが起きるのでしょうか。本記事では合同会社エミタメの代表を務めるFPの三原由紀氏が、ある親子の事例から、高齢親の資産管理について解説します。※相談事例は本人の許諾を得てプライバシーのため一部脚色しています。

「安心のための支出」が、いつの間にか家計を圧迫する理由

洋子さんの行動は、一見すると無駄遣いのようにもみえます。しかし本人にとっては、そうではありません。

 

・健康でいるため

・人とのつながりを保つため

・将来、子どもに迷惑をかけないため

 

そうした思いが重なり、支出そのものが“安心”や“生きがい”に変わっていきます。特に、一人暮らしになったあと、生活のなかに新しいつながりが生まれると、その関係を大切にしたいと思う気持ちは自然なものです。

 

一方で、年金収入は限られています。月17万円前後の収入で生活できていたとしても、そこに毎月数万円の支出が積み重なれば、資産は確実に減っていきます。

 

問題は、それが「無駄だから」ではなく、「必要だと思っている支出」だからこそ止めにくい点にあります。

「やめるか、続けるか」ではなく…親子で向き合うための現実的な一歩

FPとして、このような相談を受けたとき、まず確認するのは「いまの支出が、何年後に底をつくか」という数字です。感情的な話し合いより先に、この一点を可視化するだけで、親子の会話が変わることがあります。

 

洋子さんのケースで試算してみましょう。

 

現在の貯蓄:約650万円

月の収入(遺族年金など):約17万円

月の支出(生活費+健康関連費):約21万円

月の不足額:約4万円

年間の取り崩し:約58万円(生活費不足分+交際費)

 

75歳まで生きた女性の平均余命は約15.75年(厚生労働省・令和6年簡易生命表)。洋子さんには、これからも15年以上、生活費が必要になる可能性があります。それにもかかわらず、このペースが続けば約11年後、84歳のころに貯蓄が尽きる計算です。これは決して「遠い話」ではありません。

 

親子で最初にできる現実的な一歩は、3つあります。

 

1.「家計の見える化」を一緒にやる 

本人が自分で数字を書き出すことで、客観視が生まれます。子どもが指摘するより、自分で気づくほうが行動につながりやすいです。

 

2.「支出のすべてをやめる」ではなく「優先順位をつける」 

人とのつながりに価値を感じているなら、そこは残す。商品への支出の一部を見直す。――こうした段階的な整理のほうが、本人にも受け入れられやすいでしょう。

 

3.「介護・医療費」の備えを別に試算しておく 

70代後半以降、医療・介護費が増加する傾向があります。現在の貯蓄のうち、「生活費の取り崩し分」と「緊急時の備え」をわけて考えておくことが重要です。

 

「やめてほしい」ではなく「一緒に確認させてほしい」――その一言が、次に帰省したときの空気を、少しだけ変えるかもしれません。

 

 

三原 由紀

合同会社エミタメ

代表

 

 

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※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。

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