「安心のための支出」が、いつの間にか家計を圧迫する理由
洋子さんの行動は、一見すると無駄遣いのようにもみえます。しかし本人にとっては、そうではありません。
・健康でいるため
・人とのつながりを保つため
・将来、子どもに迷惑をかけないため
そうした思いが重なり、支出そのものが“安心”や“生きがい”に変わっていきます。特に、一人暮らしになったあと、生活のなかに新しいつながりが生まれると、その関係を大切にしたいと思う気持ちは自然なものです。
一方で、年金収入は限られています。月17万円前後の収入で生活できていたとしても、そこに毎月数万円の支出が積み重なれば、資産は確実に減っていきます。
問題は、それが「無駄だから」ではなく、「必要だと思っている支出」だからこそ止めにくい点にあります。
「やめるか、続けるか」ではなく…親子で向き合うための現実的な一歩
FPとして、このような相談を受けたとき、まず確認するのは「いまの支出が、何年後に底をつくか」という数字です。感情的な話し合いより先に、この一点を可視化するだけで、親子の会話が変わることがあります。
洋子さんのケースで試算してみましょう。
現在の貯蓄:約650万円
月の収入(遺族年金など):約17万円
月の支出(生活費+健康関連費):約21万円
月の不足額:約4万円
年間の取り崩し:約58万円(生活費不足分+交際費)
75歳まで生きた女性の平均余命は約15.75年(厚生労働省・令和6年簡易生命表)。洋子さんには、これからも15年以上、生活費が必要になる可能性があります。それにもかかわらず、このペースが続けば約11年後、84歳のころに貯蓄が尽きる計算です。これは決して「遠い話」ではありません。
親子で最初にできる現実的な一歩は、3つあります。
1.「家計の見える化」を一緒にやる
本人が自分で数字を書き出すことで、客観視が生まれます。子どもが指摘するより、自分で気づくほうが行動につながりやすいです。
2.「支出のすべてをやめる」ではなく「優先順位をつける」
人とのつながりに価値を感じているなら、そこは残す。商品への支出の一部を見直す。――こうした段階的な整理のほうが、本人にも受け入れられやすいでしょう。
3.「介護・医療費」の備えを別に試算しておく
70代後半以降、医療・介護費が増加する傾向があります。現在の貯蓄のうち、「生活費の取り崩し分」と「緊急時の備え」をわけて考えておくことが重要です。
「やめてほしい」ではなく「一緒に確認させてほしい」――その一言が、次に帰省したときの空気を、少しだけ変えるかもしれません。
三原 由紀
合同会社エミタメ
代表
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