香港で販売される債券において、さらに特徴的といえるのが格付けである。AAA格付け債から始まり、BBB-まで投資適格ぎりぎりの債券まで販売されている。つまりワンノッチさがれば、即投資不適格債になるのだが、そこにはリスクとリターンをしっかりと見極めることができる個人投資家の姿が垣間見れる。
さらには、無格付け債券も多くみられる。特に中国本土・香港銘柄には無格付け債が多いのは注目である。無格付け債であるからといって、必ずしもジャンク債券というわけではなく、購入する個人は「あの会社なら3-5年でつぶれる訳がない」という自分格付けをしている可能性は高い。当然その分「利」は乗っている。賢い投資家に育てられる市場がそこにはあると感じられる。
また、欧米系の銀行のPI用(PI=プロフェッショナルインベスター。香港では運用資産HKD8百万ドル以上でPI宣言をした投資家)のオファーシートを見ると、これは本当に面白い。格付けはあるにはあるが、BBとかB+つまり非適格投資債券即ちジャンク債である。145銘柄中投資適格であるBBB以上は20銘柄以下、その他はすべて格付けなしか、格付けがあってもジャンクと分類される銘柄である。利回り水準は5%時には8%を上回っているものもみられる。
発行体名称は必ずしも日本人になじみの深い銘柄は多くないが、興味を持ってみているとIPO銘柄の優良銘柄を探し当てるような高揚感を味わえるものがある。あまり素人の方にはお勧めできないが、資金と時間に余裕があり信用分析に腕を発揮したい方は、債券発行体としては現在のバランスシートを見ることができるので、じっくりと財務分析をして投資をしてみるのもあるかもしれない。
ちなみに日本の場合、個人が適格機関投資家となる場合の資格として、(1) 直近日における当該個人が保有する有価証券の残高が十億円以上であること、(2) 当該個人が金融商品取引業者等に有価証券の取引を行うための口座を開設した日から起算して一年を経過していること、の二つの条件を満たす必要があるが、香港では前述のようにHKD800万ドル=1億2000万円程度ということで、敷居は日本の8分の1以下と低い。
したがって、目利きに自信がある方は、香港の銀行または証券会社でPI宣言して、果敢に低格付け債投資をする機会を試されるのも個人投資家冥利に尽きると思う。ただし、一銘柄集中投資ではなく、複数銘柄に分散し、そのジャンク債投資比率も10%以下に抑えるのが賢明であろう。
一見地味な感じのする香港債券市場であるが、発行市場からさらに流通市場を眺めてみると、一転して、債券銘柄のオリンピックの様相で、信用格付け・期間・金利・発行市場等それぞれに異なる発行要綱と眺めていて飽きることはない大変魅力的な投資機会が見えてくる訳である。秋の夜長に「香港での債券投資」を考える。新たなフロンティアに踏み入れる気分である。