オフショア人民元建て債券も大きな存在感を持つ
香港の証券市場と聞けば、どうしても世界一のIPO市場と言われるHong Kong Stock Exchangeで上場される新規上場株式が注目されがちである。2013年、2014年とNew Yorkに続いて第2位のポジションを維持し、今年は低調とはいえ、世界のIPO市場をリードしていることには変わりない。
発行市場規模としては、アベノミクスで絶好調の2014年の日本のIPO市場規模が66件2346億円であったが、香港はNew Yorkに後塵を拝しているとは言え109件2320億香港ドル(香港1ドル=15円とすると3兆4800億円)と日本の15倍の規模であることがわかる。世界のIPO市場として専門家が注目するのは、アジアでは日本ではなく、香港であることは自明の理なのである。
一方、香港の香港ドル建て債券発行市場をみてみると、政府発行体を除いた民間ベース(政府系を一部含む)の年間発行量は、2012年2520億香港ドル、2013年2033億香港ドル、2014年2219香港ドル(1ドル15円換算で3兆3285億円)と株式発行市場並みであり、日本の普通社債市場が2012年来過去3年間10兆円規模(非居住者発行も含む)で推移しているのに比べて、香港ドルの発行市場としては日本に比して小規模である(発行残高ベースでは、5591香港ドル)。
2011年以降、急速に伸びてきたのが、オフショア人民元(CNH)での発行の所謂Dim Sum Bond(Dim Sumとは飲茶を意味する。本格中華に対してお茶のお伴程度の扱いということか)である。
今年2015年は人民切り下げなどの影響もあってCNH債券の発行は減少しているものの、2011年以来2012年2700億ドル、2013年3400億ドル、そして2014年が過去最高で4300億人民元(1人民元=19円で換算:8兆1700億円)と相当な規模に育っている(発行残高ベースでは、5849億人民元)。したがって、香港債券発行市場では、香港ドル建て+人民元(CNH)建ての双方を足し合わせると日本の普通社債市場よりやや大きい程度の市場と言うことができる。
世界各国の銘柄が並ぶ中、日本の銘柄はゼロ
流通市場をみてみると、これは店頭売買が多いために正確な数値が把握できないが、香港の大手銀行・投資銀行等の店頭にでている銘柄をみるとその多様性には驚かされる。筆者の今使っている香港の某大手銀行のネットバンキング上の銘柄数だけで、157銘柄が掲載されている。
個別銘柄を見てみると、アップル・マイクロソフトに代表される米国銘柄をはじめ、中国銘柄は中国銀行からデベロッパーまで幅広くカバーされており、更に香港、韓国、シンガポール、フィリピン、オーストラリア、ニュージーランドと続く。Googleに続いて、同じGで始めるGuotai Junan Financial Holdings (國泰君安)と並んでおり、さながら、世界の発行体のオンバレードである。発行市場もざまざまであり、New York市場のものあれば、香港市場のものもある。国際性に富んだ銘柄がずらりと買い物リストに並んでいるわけである。
ただし、残念ながら、日本銘柄は一銘柄も並んでおらず、日本の債券市場もガラパゴス化していると感じる。