定年後の「ナマケモノ戦略」
コロナ禍の自粛生活では、おカネをほとんど使わずに暮らせたことに驚いた人も多いだろう。とことん節約していると思っていた人も、コロナ禍のおかげで、実はさらに切り詰めることができると悟った。
おそらくこの経験は、コロナ禍が収束したあとの生活にも影響を及ぼすはず。それが厳しい時代に定年を迎える人の、いわば「ナマケモノ戦略」のヒントになる。
定年以降は、現実をリアルに見極めることが必要になる。これからも少子高齢化が加速する日本では、経済が縮小することを止めるのは難しいかもしれない。すると中流層は減少し、富者と貧者の二極化が進む。しかし、そうした状況を子細に分析し、自分の生活に取り込むことこそが重要だ。
「生活保守主義」を徹底しながら、守りを固める。そのなかで新しい生活の仕方や人間関係を模索する。守りに徹するためには、新しい価値観を受け入れる姿勢も欠かせない。つまり、「積極的消極主義」とでも呼ぶべきフロンティア精神が必要なのだ。それが、「ナマケモノ戦略」かもしれない。
おカネの問題で親族と争わないために
そして定年後の人たちが遭遇する生前贈与の話……そこには贈与税がかかってくるケースがある。
贈与を受ける額が年間110万円までは非課税。ゆえに、分割して何年かに分けて贈与を受け取る方法もある。また、孫が贈与を受け取る場合、目的が教育資金であれば、一人当たり1500万円までは非課税になる。
相続争いでストレスを抱え込まないようにするには、話し合いを事前にしておくことだろう。その結果を明示する書類も作成しておくべきだ。おカネの問題で親族との絆を失うほど虚しいことはない。
キリスト教徒の私は、貧困に陥っている人や健康に不安のある周囲の人の問題にも心を寄せるべきだと思っている。こうした人たちを社会が助けるのは当然である。人間は人間であるだけで、かけがえのない存在なのだ。
そのため、本当に困ったときには行政に相談して生活保護を受けてほしい。そうしたセーフティネットも日本には整備されており、これは誇るべき制度なのだ。
佐藤 優
