定年後のお金…固定費の見直しを検討する
定年後は日々の生活費を切り詰めることとともに、固定費を見直すことも検討する必要がある。
たとえば定年後も住宅ローンの支払いが続いているのであれば、住み替えを決行する。そうして毎月の支出を一気に減らす。都心のマンションに高額な賃貸料を払っているケースでは、郊外のマンションに引っ越すべきだろう。
現役時代は住宅手当もあり、さほど家賃が生活を圧迫することはなかったかもしれない。しかし定年後、それがなくなると、いきなり重荷になる。
そのため定年を迎えたとき、思い切って、都営住宅や区営住宅、あるいは県営住宅や市営住宅に移ることを考えるべきだろう。東京郊外なら、2万円から5万円で、それなりに満足できる部屋を借りることができる。
たとえば東京都住宅供給公社のサイトを参考にすると、東大和市の物件ならば、2DKから3Kの物件を、約4万円から6万円で借りることができる(2025年6月現在)。
であれば、定年後に住宅ローンが残っている人は住居を売却し、思い切って住み替えを決断すべきだろう。都心の賃貸住宅に住み、家賃を20万円以上も払っている人も同様である。
定年後にネットを使えるか・使えないかで広がる「新たな格差」
加えて、これから定年後の人たちにとって重要になってくるのが、ネット環境への対応力だ。ネットを使いこなせると、コミュニケーションの幅が一気に広がる。それによって、人間関係も円滑になる。
現在の若者は、テレビなど観ない。その代わり、ユーチューブやネットフリックス、あるいはアマゾンプライムビデオなどを観ている。ということは、同じメディアを観ていれば、子どもや孫と話をする際の共通の話題を見つけることができる。
近年に大ブレイクしたアニメやドラマ、たとえば『鬼滅の刃』や『愛の不時着』などを観れば、それが共通の話題となるだろう。
現在の定年後の人たちは、ネット環境に順応できる人と苦手な人、その2つに大きく分かれている。難なく順応し、これらを使いこなしている人がいる一方、ネットどころかパソコンも満足に使えない人もいる。これが新たな格差となっている。
趣味や娯楽の分野だけならまだしも、銀行や行政とのやり取りなどでネットへの対応が必須になっている。それは『韓国 行き過ぎた資本主義』(金敬哲著・講談社現代新書)で紹介されている韓国の事例だ。ネットに親和性のない高齢者が長距離バスの切符を買うために行列したり、銀行でおカネを引き出す際に高い手数料を取られたり……。
こうした実用的なこと以外にも、ネットを活用できる人は周囲とのコミュニケーションを深めることができるので、不安や孤独を感じることもなくなる。一方、ネットを活用できない人は、経済的にも社会的にも不利益を被る。そうして不安感や孤独感が増していく可能性が高い。

