財務大臣「なっ!? あなたは!!」
ショタ王「わざわざ来てくれたのか!」
衛兵「ご公務の最中に申し訳ございません。お止めしたのですが……」
ショタ王「よい。よくぞ来てくれた」
???「うふふ~、歓迎ありがとうございますぅ」
黒エルフ(……あの人、誰?)ボソッ
女騎士(おそらく、精霊教会の司祭補だ。国債購入の担当者だろう)
司祭補「はい、その通りですわ! わたしは精霊教会11人の司祭補の末席に属しています、セラフィム・アガフィアと申します♪」
財務大臣「この者たちが応募を辞退したら困るとは、どういう意味でしょう。真意を測りかねますが……」
司祭補「できるだけたくさんの候補のなかから仲介先を決めたいという意味ですわぁ」
ショタ王「できるだけたくさんの候補から選びたい、か……。その気持ち、よく分かるぞ」
司祭補「あらぁ、王さまに分かっていただけるなんて光栄ですぅ~」
ショタ王「そろそろ結婚相手を決めろと乳母がうるさいのだ。けれど紹介されるのは似たような娘ばかり。趣味は刺繍、肌は色白で性格は穏やか……。ぼくはもっと色々な候補から妻を選びたいのに、貴族の娘というのは判で押したように似た者ばかりだ」
女騎士「どの家でも同じような習い事を教えるのだ。懐かしい」うんうん
黒エルフ「あんたが言っても説得力皆無ね」
女騎士「失礼な! たしかに刺繍は苦手だが、傷の縫合は得意だ。料理や音楽、ダンスも習った。乗馬だって教わったのだ!」
黒エルフ「あのねえ、貴族の娘は普通、自分では料理しないものなのよ。音楽といってもあんたの場合は戦場でのラッパ吹きだし、ダンスじゃなくて演武でしょ。馬だって軍馬だし」
ショタ王「あはは、お前たちは愉快だな」
司祭補「うふふ。取引の仲介先を決めるのは、たしかに結婚相手を選ぶようなものかもしれませんわねぇ~」
財務大臣「も、もしや……司祭補さまはこの者たちの味方なので!?」
司祭補「あらあら、わたしは誰の味方でもありませんわぁ。ただ、理にかなった判断がしたいだけですぅ」
財務大臣「理にかなった判断ですか……。な、ならば、この者たちはふさわしくないかと! 精霊教会への信心も浅く、私利私欲を満たすためだけに立候補したのです! とても信頼できる銀行だとは──」
司祭補「信頼できるかどうかは、わたくしが自分で判断いたしますわ」
財務大臣「それは、そうですが……」
司祭補「帝都銀行と、港町銀行。今のところ、この2つの銀行が仲介業者に立候補していると聞いていますわぁ」
ショタ王「その通りだ。なぜか他の銀行からの応募は無かった」
司祭補「それでは、こうしましょう。明日、それぞれの銀行の代表者を教会にお呼びして、自己PRをしてもらうのですぅ」
ショタ王「自己PR」
司祭補「それぞれの銀行に、自分のお店の良いところを説明してもらうのですわ。それを聞いて、どちらに仲介を依頼するか決めますわぁ」
ショタ王「面白そうだな。ぼくも同席しよう」
財務大臣「な、ならば私も……」
司祭補「うふふ。ご快諾ありがとうございまぁす♪ ……ということで、ご足労いただくわぁ。よろしいかしらぁ?」
黒エルフ「あたしたちは、別に……」
女騎士「うむ。異存はない」
財務大臣「おい、衛兵! 帝都銀行に伝言だ!」
衛兵「はっ、かしこまりました!」
司祭補「あらあら、まあまあ……。明日が楽しみになってきましたわねぇ~♪」
財務大臣「お前たち、チャンスがあるなどと思うなよ?」
黒エルフ「何の話?」
財務大臣「知れたことを……。せいぜい恥をかかぬよう、自己PRを準備しておくのだな!」
黒エルフ「望むところよ。大臣さまこそ、次は遅刻するんじゃないわよ?」
女騎士(自己PR……就職活動……うっ、頭が!)
黒エルフ・財務大臣「「仲介業者に選ばれるのは、絶対に──」」
黒エルフ「港町の」
財務大臣「帝都の」
黒エルフ・財務大臣「「──銀行よ!/銀行だ!」」